2017 Fiscal Year Annual Research Report
高度な環境予測技術を統合したコンクリート構造物の環境劣化予測システムの構築
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17H04931
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Research Institution | Nagaoka University of Technology |
Principal Investigator |
中村 文則 長岡技術科学大学, 工学研究科, 助教 (70707786)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 塩害 / 自然環境 / 風洞 / 飛来塩分 / 気象モデル |
Outline of Annual Research Achievements |
平成29~31 年度の研究期間内に、コンクリート工学および気象学・海岸工学の知見と方法論を総合的に利用することで、自然環境作用に応じた構造物表面の劣化促進物質量を予測する手法を構築する予定である。さらに、過去・現在・将来の時系列的な自然環境作用から構造物内部の劣化予測が可能な環境劣化予測システムの開発を行う予定である。 平成29年度には、構造物の将来の劣化予測の入力条件となるデータを作成するために、過去のデータを統計的に整理した。気象学・海岸工学分野の数値解析技術(気象モデル・波浪推算モデル)を用いて、実橋梁に作用する環境条件の推定を行うともに、その結果から飛来塩分の推定を行った。さらに、推定結果の妥当性を確認するために、気象作用と飛来塩分の現地観測を実施し、その結果と数値解析による予測結果を比較することで、予測結果が実際の現象を十分に再現できることが確認できた。その成果を査読付論文(コンクリート工学年次論文集、土木学会論文集B2(海岸工学))として整理・発表を行った。 風洞実験により構造物から表面の劣化促進物質(水分・塩分)の移動過程を解明し、それを参考に理論的な物理過程にもとづいた数値モデルの構築を行うために、自然環境を再現できる風洞施設の構築を行うとともに、コンクリート表面の塩分濃度の時間変化を把握するために予備実験を実施した。予備実験の結果から、コンクリート表面の塩分量が時間の経過とともに、定常状態に近づいていくことが確認された。さらに、コンクリート表面の水分と塩分量に質量保存則を適用した予測モデルを構築し、予備実験の再現計算を実施した。その結果、構築した予測モデルで、コンクリート表面の塩分量の時系列変化を十分に再現できることが確認できた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
(1)自然環境作用データ(システムの入力条件)の作成とそれを用いた予測解析 平成29 年度には、環境劣化予測システムの入力条件となる自然環境作用のデータを作成するために、過去の気象・波浪データを気象庁および国交省港湾局から取得し、その整理を行った。その後、構造物の将来の劣化予測の入力条件となるデータを作成するために、過去のデータを統計的に整理するとともに、気象学・海岸工学分野で確立されている数値解析技術(気象モデル・波浪推算モデル)を用いて、実際の環境作用の推定を行った。 本年度の検討では、日本海沿岸に位置する実橋梁に作用する気象・波浪作用の推定を行い、十分に実現象を再現できることが確認できた。さらに、数値解析技術の予測精度を確認するために、実構造物周辺の地形を含めた詳細な計算を実施するとともに、現地調査を実施し、両者が概ね一致することを示すことができた。 (2)構造物への自然環境作用とそれに応じた表面物質の移動・再配分の定量化 コンクリート構造物の形状に応じた降雨・結露の洗い流しによる表面物質の移動・再配分の過程を定量化するために、自然環境作用を再現できる風洞施設を構築した。構築した風洞施設は、構造物周辺および表面の自然環境作用をコントロールできるものであり、対象とする主な環境作用は風、降雨、塩分(飛来塩分・凍結防止剤による塩分)である。風洞内で発生させる飛来塩分は、新潟県上越地方で実施した現地観測を参考に粒経100μm程度となるように、飛来塩分発生機の調整を行った。現在、基礎的な予備実験を実施している状況である。
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Strategy for Future Research Activity |
(1)構造物への自然環境作用とそれに応じた表面の物質移動・再配分の定量化のための実験 コンクリート構造物の形状に応じた降雨・結露による洗い流しで生じる表面の物質移動・再配分の過程を定量化するために、平成29年度に構築した自然環境作用を再現できる風洞施設を用いて、室内実験によりその物理過程の解明を行う。構築した風洞施設は、構造物周辺への自然環境作用をコントロールできるものであり、対象とする主な環境作用は風、降雨、塩分(飛来塩分・凍結防止剤による塩分)である。 (2)環境作用と表面の物質移動過程(表面境界条件)の予測モデルの開発 風洞実験を実施した結果から構造物の表面物質量を予測するための数値モデルの開発に取り組む予定である。構造物表面での物質の移動・再配分は、実験結果を参考に流体力学分野で用いられる方法論をベースにモデルを構築する。モデルの構成は、構造物の表面形状に応じた水分の流れと塩分の移流拡散現象を3次元空間で再現できるモデルである。数値モデルは実験結果にもとづきパラメータを調整することで予測できるように構築する。その他の過程は実験結果と既往の現地調査結果を参考に数値モデルの開発を行う。開発したモデルを研究代表者が開発済みの環境作用モデルに統合し、数値モデルの拡張を行う。 (3)コンクリート構造物の環境劣化予測システムの構築 これまでの研究で開発してきた環境作用と表面の物質移動過程の予測モデルとコンクリート内部の劣化予測モデルを統合し、環境劣化予測システムの構築を行う。劣化予測モデルは、浸透塩分量・水分量、鉄筋の腐食量、構造物の各部材の耐力を計算できるモデルとする予定である。
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Research Products
(6 results)