2017 Fiscal Year Annual Research Report
社会環境と行為の共進化による自律分散的な都市・交通システム創発現象のモデル分析
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17H04938
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
力石 真 広島大学, 国際協力研究科, 准教授 (90585845)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 自律分散システム / スラム / 中山間地域 / ライドシェア |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では,スラム特有の都市秩序の形成,過疎地域における自主的な生活関連サービスの運用といった,(計画行為や需給メカニズムではなく)自律分散的に都市・交通システムが構築される現象を,「社会環境に適応しようとすることによって人々がその環境を集合的に再構築する(=社会環境と行為の共進化)」と考え,その創発メカニズムを理論的に解明した上で,創発現象を表現する実証モデルを構築する.具体的には,4年間の研究期間中に,このようなモデル構築が,都市・交通システムに直接介入する中央集権的な計画行為の影響と,社会規範への介入や社会関係資本の強化を通じて各主体のより良い適応行動を期待する自律分散的施策の影響を,統一された理論フレームの下で評価可能となることを,2つの実証分析例を通じて示す. 上記目的を達成するために,平成29年度は以下の3点について研究を進めた.第一に,共進化の発現に寄与するであろう社会的選好のモデリングについて,計量経済学分野における既存研究を包括的に整理した.加えて,社会選好の集合的な学習について進化論的観点から整理を進めた.ただし,この点については十分な整理に至っておらず,引き続きレビューを進める必要がある.第二に,自律分散的に都市・交通システムが構築されてきたと考えられるインド・ムンバイ市のスラムを視察し,調査対象地域を選定した.また,人口減少が進む中山間地域において交通日誌調査を実施し,基礎的な分析を行った.第三に,住民間の社会的選好が高い場合に創発しうるボラタリーなライドシェアに着目し,中山間地域におけるモビリティ確保の手段としての成立可能性を理論的に検証した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成29年度の主な成果は以下のとおりである. (1)文献レビューを進め,既存の社会的選好を考慮した計量経済モデルを包括的に整理し,成果を査読付き学術誌に投稿した.また,社会選好の集合的な学習について進化論的観点から整理を進めた. (2)自律分散的に都市・交通システムが構築されてきたと考えられるインド・ムンバイ市のスラムを視察し,調査対象地域を選定した.また,人口減少が進む中山間地域において交通日誌調査を実施し,基礎的な分析を行った. (3)住民間の社会的選好が高い場合に創発しうるボラタリーなライドシェアに着目し,中山間地域におけるモビリティ確保の手段としての成立可能性を理論的に検証した. 以上から,研究実施計画に基づき,概ね順調に進展していると判断する.
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Strategy for Future Research Activity |
今後,中山間地域およびスラムの2つのフィールドにおいて,理論・実証分析を進める予定である. 中山間地域においては,取得した交通日誌データの解析を進めるとともに,住民間の社会的選好が高い場合に創発しうるボラタリーなライドシェアシステムが成立しうるかどうか,追加のアンケート調査を実施し確認する.また,本年度構築したライドシェアマッチングアルゴリズムを適用することにより,ライドシェアシステムのモビリティ確保の手段としてのポテンシャルを実証的に示す. スラムにおいては,来年度,スラム及びSRA(スラム再生公社)住居に住む人々を対象とした調査を行い,スラムにおいて構築されてきた自律分散的なシステムに対して介入があった場合の影響を評価する.
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Remarks |
発表予定/査読中の論文: ・森脇宇俊,力石真,藤原章正 (2018) 中山間地域におけるライドシェアの成立可能性に関する数値シミュレーション, 第57回土木計画学研究発表会. ・力石真,瀬谷創,福田大輔:社会的相互作用に着目したエビデンスベース研究の展開と土木計画への応用可能性,土木学会論文集D3 (土木計画学)(査読中).
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