2018 Fiscal Year Annual Research Report
Collapse mechanism of steel moment frames with columns under high axial load subjected to bi-directional ground motions
Project/Area Number |
17H04944
|
Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
松井 良太 北海道大学, 工学研究院, 准教授 (00624397)
|
Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
|
Keywords | 鋼柱部材 / 座屈性状 / 数値解析 / 載荷実験 / 履歴モデル / 終局耐震性能 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成30年度は主として,軸力比の高いH形断面鋼柱部材の耐力および累積塑性変形性能を実験的に検証した。寸法効果を比較するため実大の1/3サイズの試験体を2体,軸力比の影響を確認するため実大の1/6のサイズの試験体を10体製作し,載荷実験を実施した。得られた結果を数値解析的に再現するため,東京工業大学が所有している大規模クラスター型コンピュータTSUBAME2.5に組み込まれている汎用有限要素プログラムABAQUSを用いた。具体的に得られた成果を以下に列記する。 1/6サイズの試験体の耐力は,1/3サイズの試験体とほぼ同等であり,耐力に寸法効果が与える影響は小さい。しかし,1/6サイズの試験体において部材端部で亀裂が発生するメカニズムが,1/3サイズの試験体と異なり,累積塑性変形性能に関しては両者で差異が見られた。これより,1/6サイズの試験体でも軸力比の影響を検証し得るものとみなし以下の知見を概説する。高軸力比となるH形断面柱では,曲げを受け局部座屈が発生すると徐々に耐力が劣化し,軸力を受けない場合と比較して軸方向の塑性化領域が拡大する。弱軸回りより強軸回りの曲げを受ける方が,H形断面柱はフランジ,ウェブともに局部座屈を生じやすく,加力方向により耐力劣化の度合いが変化することを実験的に確認した。この実験で得られた軸力比がH形断面柱の耐力に与える影響が,ABAQUSによる数値解析で追跡できることを確認した。 また,平成29年度に取り組んだ高軸力下において局部座屈を伴う箱形断面柱に関する数値解析的分析と,局部座屈による耐力劣化を考慮したH形断面柱を有するブレース付鋼構造骨組の地震応答分析から得られた知見をもとに2編の学術論文を編纂した。査読論文雑誌へ,この2編を投稿したところ採用され,令和元年6月,7月に登載される予定である。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本課題における載荷実験を遂行するにあたり,これまで申請者が取り組んだ実験のセットアップとは異なり,新たな課題が山積していたが,当初の計画通り平成30年度中に解決することができた。この課題を解決したことから,高い軸力を受けるH形断面鋼柱部材の載荷実験を実施することができ,概要に記した通りの成果が得られた。概載荷実験では,Matthew Eatherton准教授にも立ち会っていただき,今後さらに詳しい数値解析的検討を進めていくことができるものと考えている。 平成29年度に得られた成果をもとに編纂した2編の学術論文が,査読論文雑誌へ採用されることとなり,これまでの取り組みに対し一定の学術的評価が得られたものと考えられる。 以上より,本課題はおおむね順調に進展しているものと判断した。
|
Strategy for Future Research Activity |
平成31年度では,角形鋼管の鋼柱部材試験体の模型載荷実験を遂行する。実験要領は平成30年度と同様である。寸法効果を確認するための1/3サイズの試験体については載荷実験を実施しており,残りの高軸力比の影響を確認するため,残りの1/6サイズの試験体の載荷実験を計画している。 載荷には,東京工業大学緑が丘2号館に設置しているMTS社製のアクチュエータを組み込んだフレームを用いる。利用可能なアクチュエータの能力の制限より,引張降伏軸力に対する高軸力比を0.4~0.8まで変化させることができる実大の1/6程度の断面を有する試験体を選定する。主として局部座屈との相関性の高い幅厚比と載荷方向を変化させた試験体を5体用意し,挙動について調査する。 平成29~30年度までの研究活動を総括し,鋼柱部材の局部座屈挙動を考慮し,2方向地震動を受ける骨組の終局耐震性能を分析する。鋼構造骨組における外周角部においては,地震時において骨組が2方向に応答することから,2方向の曲げを受けると考えられる。局部座屈を伴うレベルにおける鋼柱部材の2軸曲げに対する挙動を具に観察することで,1方向地震動を受ける鋼構造骨組の応答では見られなかった現象が明らかになると想定される。本年度は,平成29~30年度までに得られた部材実験の結果を用い,鋼構造骨組の2方向地震応答を分析できる数理モデルを構築し,基礎的な検討を進める。 以上の模型載荷実験や,数値解析的な分析に当たっては,引き続き東京工業大学竹内徹教授および竹内徹研究室に所属している修士課程,学士課程の学生にも協力を要請する 平成30年度までに得られた成果を国内外の学会大会にて発表し,他機関も含めた研究者との意見交換を行い,現状における達成度と未解決な点について明快にしていく予定である。成果について整理が完了した時点で査読付きの学術論文への投稿を試み,論文の登載を目指す。
|
Research Products
(6 results)