2019 Fiscal Year Annual Research Report
Prediction and evaluation of high-risk low-probability phenomena in an urban canopy space
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17H04946
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
池谷 直樹 九州大学, 総合理工学研究院, 准教授 (70628213)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 都市キャノピー / 近赤外分光法 / 屋外スケール模型実験 |
Outline of Annual Research Achievements |
H31年度は,ダイナミックフラックスシステムを用いた物質輸送係数計測システムの確立,屋外観測データの分析に基づく都市キャノピー乱流場に関する論文執筆,および高解像度数値流体計算による非定常室内高リスク環境データベースの構築を行った.以下にその概要を行った.ダイナミックフラックスシステムによる物質輸送係数計測システムの開発においては,前年度から継続してその主要な計測系となる蒸発量計測システムの精度向上と複数対象における計測を行なった.蒸発量計測システムは,対象物の含水量を近赤外光の反射強度から推定するものである.H29年度に行なった近赤外線ラインカメラでの計測およびH30年度に導入したスペクトルカメラによる計測により得られた知見をもとに,対象面含水率と反射強度の関係式を決定する較正曲線の同定実験方法を見直すことで,計測システムの高精度化を図った.同システムを風洞実験内に設置した条件での較正実験に切り替えることにより,気流下に暴露した平板,リブ後流および立方体後流を対象とした床面蒸発量分布を計測した.また,同実験系を従来法であるろ紙蒸発法による計測結果と比較することで,開発した近赤外線ラインカメラによる水分蒸発量計測の精度検証した.準実大スケール模型実験のデータ分析については,観測データの解析を終了し,屋外サイトでの速度頻度分布や風向などの基本的な気流場の状態に加えて,建物の壁面圧力分布と上空気流との関係や建物模型に囲まれた歩行者空間についての知見をまとめ,国際ジャーナルに投稿,掲載が決定した.また,同データを歩行者空間速度分布と上空風の関係に着目し再解析し,論文執筆を行なっている.最後に,H31年度には建物内外の高解像度数値流体解析を行い,室内で発生する低頻度事象について分析を進めた.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
蒸発量計測システムは,水分を含む対象に水の吸収波長帯を含む近赤外光を照射し,その反射強度から推定するものである.間接計測のため較正実験を高精度に行うことが要求されるが,計測対象が複雑であることや近赤外光の取得の困難さが原因となり,再現精度があげられなかった.そこでH31年度には,昨年度に導入しスペクトルカメラを用いることにより,前年度に比べて高い精度での較正実験が可能であることを確認した.加えて,単純な平板の対流熱伝達率の経験式の再現を目的として,気流下に暴露した平板の蒸発量計測を行い,従来法とよく一致することを確認した.さらに,様々な形状を対象とした輸送係数計測を行い,新システムの実用性について検証することができた.準実大スケール模型実験のデータ分析については,建物群内気流および壁面圧の時間変動と上空風速,歩行者空間風速の関係を分析し,接近風速により建物周辺気流分布が大きくなることを示した.また詳細なスペクトル解析により,大規模変動流に呼応して平面圧力が変化していることを示し,非定常気流による室内低頻度高リスク環境の発生状況を整理した.これらの成果は,建築環境工学系のトップジャーナルであるBuilding and Environmentに二報投稿し,いずれも掲載が決定している.さらに,高解像度数値流体解析では,H30年度に主として実施していた超高解像度数値流体解析の追加計算として,建物開口近傍や建物内を十分に解像した計算を行った.高解像数値流体解析結果によりデータベースをもとに,室内換気量モデルの検証を行なった.
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Strategy for Future Research Activity |
蒸発量計測システムの構築においては,スペクトルカメラの導入により,従来に比べて高精度な較正実験と非接触計測が可能なことを示した.加えて,複数条件を対象としたデモ実験を行った.これまでに,非接触計測による物質輸送係数推定が可能であることを示すことができたことから,R2年度においては,これらを用いた較正実験の高精度化に加えて,様々な建物周辺気流を対象とした非接触計測を行う予定である.加えて,粒子画像可視化計測手法による速度場と床面蒸発量の同時計測を試み,ダイナミックフラックスシステムの構築し,本研究課題の研究目標達成を目指する.また,引き続き屋外風速気流場の分析を進めることで,都市キャノピー空間における瞬時風速の確率密度およびパワースペクトル密度を元に,気流場の確立性状が如何に歩行者空間速度のまれな確率事象に影響するかについて分析を行う.加えて,風洞実験による歩行者空間速度の確率正常把握をすることで,十分にコントロールされた条件と実在環境における稀な高風速および低風速事象の発生頻度の差異について分析する.さらに,建物周辺気流および建物室内気流の高精度数値流体解析結果をもとに,室内環境における低頻度事象に関する分析を進める.研究課題最終年度に当たり,これまでの成果を総括し,ダイナミックフラックスシステムの完成とこれまでの都市キャノピーおよび建物内気流に関する確率正常について,論文執筆を進める.
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