2018 Fiscal Year Annual Research Report
Fabrication of ferromagnetic CNT (carbon nanotube)-IL (ionic liquid) composites using anomalous Coulombic fields of carbon nanopores
Project/Area Number |
17H04953
|
Research Institution | Shinshu University |
Principal Investigator |
二村 竜祐 信州大学, 先鋭領域融合研究群環境・エネルギー材料科学研究所, 特任助教 (90647223)
|
Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
|
Keywords | イオン液体 / 異常クーロン力空間 / 磁性イオン液体 / カーボンナノチューブ / 複合材料 |
Outline of Annual Research Achievements |
2018年度は、カーボンナノチューブ細孔中にイオン液体を導入した時の構造について特に注力して研究を行った。2017年度に購入したイメージングプレート付きX線散乱測定装置を用いることで、3万円/gの高価な高純度カーボンナノチューブに対しても数mg程度の微小量で測定が可能となった。これによって、研究が効率的に進められるようになった。 X線散乱測定によりカーボンナノチューブの有する細孔中に閉じ込められたイオン液体の構造は、これまでに研究してきた活性炭細孔中と大きく異なることがわかってきた。具体的には、同じ細孔径の活性炭及びカーボンナノチューブを比べたときに、細孔中でのイオン液体の構造は、カーボンナノチューブ細孔中でより規則性を増した構造を形成することが明らかになった。これは来年度行う予定である、強磁性を示すカーボンナノチューブ‐磁性イオン液体複合材料の合成に対して、非常に重要な結果である。カーボンナノチューブ細孔中で、磁性イオンである陰イオン間の規則性構造が形成できれば、強磁性を発現する複合性デバイスの開発につながる。さらに、カイラリティーのそろったカーボンナノチューブを用いることで、より規則構造性を有するイオン液体構造が得られると期待できるため、現在この実験の準備を開始している。 カーボンナノチューブ細孔中に閉じ込められたイオン液体の構造についてのより詳細な検討に向け、現在ハイブリッドリバースモンテカルロ法をシリンダー細孔系へ適応するために改良を行っている。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本年度は、(1)カーボンナノチューブ細孔中にイオン液体を導入した時の構造について特に注力して研究を行ったこと、そして(2)研究代表者が2019年度4月から信州大学理学部に異動したこともあり、カーボンナノチューブ‐磁性イオン液体複合材料の合成について若干遅れが出ている。ただ異動先である信州大学理学部は、磁化率測定に必要な量子干渉(SQUID) 磁化率計及び、カーボンナノチューブ‐磁性イオン液体複合材料の配向膜の合成に必要な超電導磁石を有している。また来年度から指導する卒業研究の学生にも研究協力が見込めるため来年度の本研究の大幅な進展が期待できる。
|
Strategy for Future Research Activity |
2019年度は最終年度であり、下記のことを行う。 (1)カーボンナノチューブ細孔中でのイオン液体構造の解明 ハイブリッドリバースモンテカルロ法を用いてイオン液体が形成する特異な規則構造を明らかにする。カイラリティーの異なるカーボンナノチューブを用いて同様の検討を行い、カイラリティーによるイオン液体構造の違いについても明らかにする。
(2)高い1軸磁気異方性を有する複合材配向膜の合成 合成したCNT磁性イオン液体複合材は、チューブ軸方向と直径方向で磁気異方性が生じる。つまり、1本のCNTが非常に高い性能の永久磁石となることが期待できる。しかしながら、バルク材としてのCNTはチューブが様々な方向で絡み合って存在しているため、その利点が活用できない。この問題点を、磁場存在下でCNT-磁性イオン液体複合材の配向膜を合成することにより解決する。まず、CNT-磁性イオン液体複合材をCNT分散溶媒(有機溶媒もしくは界面活性剤溶液)を用いて分散する。そして、分散液をネオジム磁石による磁場存在下でフィルタレーションすることにより、複合材でバッキーペーパ―を作成する。濾過膜上に形成するバッキーペーパーは、磁場の影響を受けて配向する。磁場下においてバッキーペーパ―を作成する実験装置は本申請で自作する。ネオジム磁石の磁場では、配向膜の調製が困難であればテスラ級の高磁場を発生させることができる超電導磁石(信州大学理学部)を利用する。作成した膜材の配向性をIP-XRD装置により、そして異方性磁化率を磁化率測定する方向を変えることにより評価する。より磁気的性能の高いCNT-磁性イオン液体複合材を用いて配向膜を調製することにより、高い異方性磁化率(目標値:ネオジム磁石の異方性磁界Ha>70 kOe)を有する複合材膜を合成する。
|