2017 Fiscal Year Annual Research Report
Multi-probe Characterization of Hydrogen, Dislocation, and Damage: towards unraveling hydrogen embrittlement mechanism of advanced high strength steels
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17H04956
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
小山 元道 九州大学, 工学研究院, 助教 (20722705)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 水素脆化 / 銀デコレーション / 電子チャネリング / 損傷発達 / 複相鋼 |
Outline of Annual Research Achievements |
まず、本研究の目的を述べると、1GPa級鉄鋼材料、特に複相鋼の水素脆化機構を解明することである。特に(1)水素の偏析の可視化、(2)複数機構に由来する水素助長損傷発達(ボイド/き裂の成長)の定量評価、(3)バルク試料における水素-転位相互作用の直接観察、の三つに主眼を置く。本研究を通して、これら三つの技術開発を行い、複雑内在組織を有する鉄鋼材料の水素脆化研究の指針を示す。ここで、特にはマルテンサイトを含む複相組織を対象として、金属組織学と力学に立脚した脆化機構の考察をする。 (1)の観点では、銀と水素の置換反応を利用した、水素脱離時のその場銀デコレーション法により、時間分解能を有する微視組織スケールでの水素可視化技術を構築した。具体的には、銀イオンを含む溶液中に水素チャージした試料を浸漬し、長焦点レンズを用いた光学顕微鏡観察を行った。この手法は純鉄、オーステナイト/マルテンサイト、複相変態誘起塑性鋼で成功している。 (2)の観点では、オーステナイト/hcpマルテンサイト、フェライト/bctマルテンサイト、オーステナイト/bctマルテンサイトに対して損傷発達の定量解析を実施した。この損傷面積率、損傷数密度、平均損傷サイズ、損傷アスペクト比の観点から、各複相鋼の水素脆化機構/挙動の解析に成功している。また、光学顕微鏡による損傷発達の定量解析簡便化も達成している。 (3)の観点では、電子チャネリングコントラスト法を用いて、オーステナイトにおける水素-転位相互作用による転位運動のその場観察に成功した。また、その場観察だけでなく、特定の損傷近傍における転位分解可能なレベルの高空間分解能観察に成功している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
損傷発達および組織観察の観点では、当初計画されていた従来複相鋼の評価法確立だけでなく、確立した評価手法を活かし、新高強度材料(準安定ハイエントロピー合金)の水素脆化メカニズム解明にまで至っている。 水素可視化技術の観点では、本研究で開発した種々な手法を総説を国際誌に掲載するところまで至っている。 また、水素-転位相互作用の電子チェネリングコントラスト法によるその場観察についても、観察の成功だけでなく、再現性まで確認されている。
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Strategy for Future Research Activity |
上記概要にも記載したが、本研究の目的を改めて述べると、1GPa級鉄鋼材料、特に複相鋼の水素脆化機構を解明することである。特に(1)水素の偏析の可視化、(2)複数機構に由来する水素助長損傷発達の定量評価、(3)バルク試料における水素-転位相互作用の直接観察、の三つに主眼を置く。本研究を通して、これら三つの技術開発を行い、複雑内在組織を有する鉄鋼材料の水素脆化研究の指針を示す。ここで、特にはマルテンサイトを含む複相組織を対象として、金属組織学と力学に立脚した脆化機構の考察をする。 目的(1)に対応して、前年度では単純成分系である純鉄に対して銀デコレーション法を用いたその場水素分布可視化技術を構築した。この技術を用いて、本年度は複相鋼を対象に、その場銀デコレーション法を適用し、損傷発達挙動との対応を考察する。 目的(2)に対応して、前年度には、損傷発達の定量評価および定量パラメータ測定の簡便化に成功した。同様の手法を用いて、損傷発達挙動の侵入水素量依存性を評価する。また、複相鋼の損傷発達の学理構築のため、最小格子欠陥単位である空孔の形成・発達への水素の影響を陽電子消滅法によって明らかとする。 目的(3)に対応して、前年度にその場観察用引張試験機を導入した。本年度は、この装置を用いて、応力下の転位運動その場電子チャネリングコントラスト観察を行う。また、この観察の際に、バーガースベクトルなどの転位性格のキャラクタリゼーションも試みる。これら研究成果は、国際誌での論文発表、国内/国際学会での口頭/ポスター発表にて公開する。
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Research Products
(17 results)