2017 Fiscal Year Annual Research Report
4次元in-situ界面観察と熱物性計測によるインクルージョンフリーSiCの実現
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17H04960
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
川西 咲子 東北大学, 多元物質科学研究所, 助教 (80726985)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | シリコンカーバイド / 熱伝導率 / 溶液成長法 |
Outline of Annual Research Achievements |
高品質シリコンカーバイドの高速溶液成長の実現に向け、シリコン中にクロム、鉄などを添加した溶媒の利用が検討されてきたが、成長結晶中の溶媒の取り込みの根絶には至っていない。そこで本研究では、溶媒の取り込みの無い高品質結晶の育成を目指し、溶液の高温熱物性の観点で調査を進めている。当該年度は、溶融シリコン―鉄および溶融シリコンークロム合金の熱伝導率の温度および組成依存性を評価した。レーザーフラッシュ法により測定した熱拡散率に、比熱および密度を乗ずることで熱伝導率を得た。その結果、いずれの系でも熱伝導率は温度の上昇とともに増加し、電子の散乱の影響が増大することが示された。また、いずれの系でも純金属の融体と比較し合金にすることで熱伝導率は大幅に減少し、1:1程度の混合比にて最小値を示すことがわかった。また、溶融シリコン―鉄系合金に関しては、ウィーデマンーフランツ則を適用して電気抵抗率の報告値より推測される熱伝導率とよい一致を示し、同合金が溶融状態で金属的に振る舞うことがわかった。得られた結果より、シリコンカーバイドの溶液成長時の成長界面近傍での温度勾配への寄与を熱流動予測により推算すると、熱伝導率の小さな合金系の場合に温度勾配がより大きくなることが示された。高品質結晶を得るためには溶液内の温度分布を最適化することが重要とされており、本研究での熱伝導率の実測値を用いることにより溶液内の温度分布をより精密に予測可能な体制を整えた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の目標であった溶融シリコン系合金の熱伝導率の計測を達成したのに加え、熱流動予測にも予定より前倒しで着手し、一定の成果を得ることができた。一方、溶液成長実験によるインクルージョン発生との関連付けには至らなかったことから、概ね順調との判断をした。
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Strategy for Future Research Activity |
熱伝導率の評価に用いた比熱および密度には、実測値がないためそれぞれ加成性を仮定した値を用いている。より精確な熱伝導率の評価のためには、比熱および密度の精確さが欠かせないことから、それらの物性値を評価し、熱伝導率の高精度評価を目指す。また、溶液成長プロセスの熱流動予測に対して各物性値が及ぼすインパクトを評価し、熱流動設計をする上で重要となる因子を明確にする。また、溶液成長実験により得られるインクルージョンの発生状況と熱流動予測結果との関係を明らかにする。
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Research Products
(6 results)