2017 Fiscal Year Annual Research Report
微細なイガグリ構造を利用した酸化消光フリーのシリコン発光材料の開発
Project/Area Number |
17H04962
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Research Institution | Tokyo University of Agriculture and Technology |
Principal Investigator |
稲澤 晋 東京農工大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (30466776)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | シリコン / 発光材料 / 亜鉛還元反応 / SiCl4 |
Outline of Annual Research Achievements |
亜鉛還元反応で得られるシリコンマイクロ粒子を酸液で化学的に削ると、イガグリ状の発光粒子が得られる。本研究では、イガグリ状の特異な構造を利用して、長く明るく光るシリコン粒子を開発することを目的としている。H29年度は、イガグリの先端のみを選択的に酸化して、溝の入り口を狭くすることを検討した。イガグリ粒子の発光サイトはイガの表面に多数形成されている。イガの先端の間隔を、気体分子の平均自由行程程度に狭くできれば、イガ間への酸素分子の侵入を抑制できる。この結果、イガ表面の発光サイトが酸化されて起こる消光が遅延できると期待される。減圧下の様々な条件下でイガグリ粒子を酸化させた後、発光強度の時間変化を測定した。その結果、減圧酸化処理を行った粒子では、未処理のものよりも発光強度が持続する結果が得られた。一方で、完全に酸化し粒子表面がSiO2になってしまうと発光しなくなる。赤外分光法を用いた粒子表面の分析では、Si-Oなどの酸化に起因する結合の増加は明確には確認できなかったが、「適度な」酸化によって、酸化消光に耐性のある粒子が得られたと考えられる。また、蛍光顕微鏡による観察で、マイクロサイズであるイガグリ粒子の発光サイトには明るさのムラがあることがわかった。よく光る部分の分析を進めれば、高輝度化への知見が得られると期待される。亜鉛還元反応では、反応条件に応じてマイクロ粒子に限らずSiナノワイヤーやSiウィスカーなどの材料も得られる。マイクロ粒子を合成する上で反応条件が与える影響を検討し、これらのSi材料を含めた生成メカニズムにも進展があった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
減圧酸化による「適切な」酸化は計画通りに実施できた。酸化膜の厚み計測には課題が残るものの、当初の目論見通りの効果を得ることができたと考えている。蛍光顕微鏡による個々の粒子の発光部位観察が可能となった。計画当初から次年度以降に予定をしていた、イガグリ形状や部分的な表面酸化と発光部位の相関を明らかにする足ががりができたと考える。
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Strategy for Future Research Activity |
部分酸化による発光制御に加え、エッチング条件による形状制御を進める。これまでの検討で、エッチングは粒子を酸液に浸漬する時間に対して必ずしも比例的に進まないことがわかっている。エッチングで起こる化学反応は概して発熱であるため、エッチング溶液の温度計測を行い、エッチングの進行度合いを判断する。これに加えて、原材料であるマイクロ粒子の合成条件がエッチング後のイガグリ形状を決める一つの要因ともなる。このため、亜鉛還元反応で生成するSi材料と反応条件との相関を広く検討する。特にSiマイクロ粒子に対しては、合成条件とエッチング後の形状との関係を明らかにする。
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