2017 Fiscal Year Annual Research Report
金属間化合物―固溶体ハイブリッドアロイを用いた高効率触媒系の開発とその学理の構築
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17H04965
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
古川 森也 北海道大学, 触媒科学研究所, 准教授 (10634983)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 金属間化合物 / ハイブリッドアロイ / 排ガス浄化 / 位置選択性 / 触媒設計 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は、自動車排ガス浄化反応のひとつであるNO-CO反応に着目し、200℃以下の低温領域で高いN2選択性を示す高性能Pd系合金触媒の開発に着手した。Pd系触媒は特に200℃以下の低温領域において、地球温暖化係数の極めて高いN2Oが副生成物として、高い割合(N2O選択率60~70%)で生成するため、N2Oの生成を抑え、N2の選択性を高める必要がある。種々のPd系合金を検討した結果、Al2O3に担持したPdInが本反応に高い選択性を示すことを見出した。一方でInの添加は触媒活性(NO転化率)を低下させることが判明したため、PdInの高いN2選択性を維持したままNO転化率を向上させる触媒設計を次に行った。そこでInの一部を第3金属で置換するハイブリッドアロイ構造の適用を検討し、PdIn/Al2O3に様々な第3金属を添加しその効果を検討した結果、Cuの転化により、触媒活性を大幅に向上させることができ、高いNO転化率、N2選択性を両立できることを見出した。Pd(In0.33Cu0.67)/Al2O3は150~200℃の低温領域でGHSV=30,000h-1の条件において、NO転化率100%、N2選択率100%(N2収率100%)を達成し、Pd系触媒を用いて低温におけるNOxの完全分解に初めて成功した。 またこれ以外にも、RhBi/SiO2がジエン類の位置選択的水素化反応において、高い末端C=C結合選択性を示すことを見出した。本触媒は位置選択性だけでなく、目的生成物であるアルケンの逐次水素化を抑制する高い化学選択性をも兼ね備えていることが判明した。またDFT検査員を含む詳細な反応機構研究から、表面の特異的原子配列(一次元に配列したRh)および原子半径の大きなBiの立体障害により、内部C=C部位の吸着が抑制され、高い選択性が発現することが示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本研究の主目的であるハイブリッドアロイ構造を適用した触媒設計により、劇的な触媒性能の向上を達成することに成功した。これは当初の目標を十分にクリアしているものであり、計画は順調に進展していると判断できる。またそれ以外にもRhBiの系で非常に興味深い触媒特性の発見とその発現メカニズムの解明を達成し、その成果をトップジャーナルに掲載するまでに至った。以上の成果から、本研究は当初の計画以上に進展していると判断できる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は今回見出されたPdIn系触媒をベースに、NO-CO反応以外の様々な排ガス浄化反応(例えばNO-CO-O2、NO-CO-O2-C3H6、NO-H2反応など)に本触媒系を適用し、第二金属、第三金属、およびその組成比を各反応において最適化することで、高効率な触媒反応系群を開発していく予定である。また、Pd-In-Cu系触媒における触媒活性向上の原因を詳細な反応機構解析を行うことで明らかにし、本研究のもう一つの柱である「ハイブリッドアロイの学理構築」に資する。
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