2018 Fiscal Year Annual Research Report
金属間化合物―固溶体ハイブリッドアロイを用いた高効率触媒系の開発とその学理の構築
Project/Area Number |
17H04965
|
Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
古川 森也 北海道大学, 触媒科学研究所, 准教授 (10634983)
|
Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
|
Keywords | 金属間化合物 / 合金 / 触媒 |
Outline of Annual Research Achievements |
2018年度においては、排ガス浄化反応系に着目し、その中の重要な反応であるNO-CO反応に対し、既に高いN2選択性を示すことが判明しているPdIn金属間化合物触媒のInを一部第三金属で置換したPd(In1-xMx)(M = Fe, Co, Ni, Cu, Zn, Ga)の触媒性能を検討した。その結果、M = Cuとした場合にN2選択性を低下することなく、NO転化率が劇的に向上することが判明した。また、EXAFS、STEM-EDS、CO吸着FT-IRを用いた多角的なキャラクタリゼーションにより、ハイブリッドアロイ構造を有する合金ナノ粒子が実際に構築されていることを実証した。 一方で、その他の金属で置換した場合には活性向上は見られず、本現象はCu置換において特異的に見られることが分かった。さらにCu置換量を変化させ最適化した結果、x = 0.67の場合に最も高い活性が得られることが判明した。また反応条件を最適化した結果、200℃の低温条件下において、NO転化率100%、N2選択率100%を達成した。これは金属触媒を用いて達成された世界初の例である。 さらに、詳細な反応機構解析やDFT計算を用いた検討から、触媒性能向上に対するInおよびCuの効果を原子レベル、素過程レベルで明らかにした。本結果は化学分野におけるトップジャーナルに論文として掲載され(Chemical Science, 2019, 10, 4148-4162)、掲載号のバックカバーにも選定された。 またこれらに加え、当初の研究計画で予定していたPd3Pb上でのアミン酸化によるイミン合成の系に対し、Pdの一部を種々の金属に置換したハイブリッドアロイ触媒を用いて触媒探索を行った。その結果、Pdの一部をAuに置換した(Pd0.5Au0.5)3Pbを用いた場合に、触媒活性が大幅に向上することを見出した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当初の計画で予定していたアミン酸化の系においてハイブリッド化により触媒活性向上が可能な金属の組み合わせを見出した。また、当初の計画で予定していなかったNO-CO反応の系において、ハイブリッドアロイをベースとした触媒設計により極めて高性能な触媒を開発するとともにその作用機構を詳細に解明した。DFT計算を含めた詳細な検討により、ハイブリッドアロイの触媒化学に関する学理構築を大幅に推進することが出来た。 以上の進捗状況から、本研究は当初の計画以上に順調に進展していると判断した。
|
Strategy for Future Research Activity |
本年度は対象反応として、メチルシクロヘキサン脱水素およびアミン酸化に着目し、これらの系において高効率な触媒の開発をハイブリッドアロイの概念をベースに行う。具体的には、メチルシクロヘキサン脱水素においては、これまでの検討から、Pt3Inが高い選択性・耐久性を示すことおよび、Pt3Feが高い触媒活性を示すことを見出している。そこでこれらをハイブリッドさせた、Pt3(In0.5Fe0.5)を開発し、活性、選択性、耐久性全てにおいて優れた特性を示す高性能触媒を開発する。またアミン酸化においては、既にPd3Pbより高い活性を示すことを見出している(Pd0.5Au0.5)3Pbに関して、Auの置換量や担体の最適化を行い、更なる触媒の高性能化を達成する。また、いずれの系においても、反応機構を詳細に解析することでハイブリッド化がどのようにして性能向上に寄与しているかを明らかにする。さらにDFT計算による詳細な検討も加えることにより、原子レベル・素過程レベルでこの現象を解明することで、最終目標であるハイブリッドアロイの触媒化学における詳細な学理を構築すると共にその深化を図る。
|