2018 Fiscal Year Annual Research Report
枯渇油田再生化技術開発を志向した原油分解メタン生成機構の解明と新規微生物の獲得
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17H04970
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Research Institution | National Institute of Advanced Industrial Science and Technology |
Principal Investigator |
持丸 華子 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 地質調査総合センター, 主任研究員 (90462861)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 油田 / ガス田 / メタン生成 / 古細菌 / 細菌 |
Outline of Annual Research Achievements |
一般に原油の回収率は20-60%であり、枯渇油田とされてもその多くは地下に残されている。この原油をメタンに変換し、天然ガスとして回収する技術の開発を目指し、一部の深部地下油層環境で起きていることが示唆されている生物的原油分解メタン生成反応のメカニズムを解明することを目的としている。これまでに原油の炭化水素組成分析(原油の生分解度)やCH4~C4H10およびCO2のガス成分の安定同位体比分析(メタンの生成起源)などの地球化学的観点から、山形県と秋田県の2カ所の油田で原位置の原油分解メタン生成ポテンシャルの存在を確認してきた。平成29年度は原油分解メタン生成培養系の構築を行った。 平成30年度は昨年度原油分解メタン生成が確認された培養系と同じ坑井の試料を用いて、脂肪酸分解メタン生成培養系の構築を行った。脂肪酸は原油の主成分であるn-アルカンから次に生成されると想定されており、n-アルカン分解微生物獲得のためにその分解過程の下流を担う微生物の同定ならびに集積培養は重要である。この脂肪酸としてC10~C20の比較的長鎖の脂肪酸を基質とした培養を昨年度から継続していたところ、良好なメタン生成が確認された。脂肪酸を基質として培養する系においてこの培養器内に設置している油層環境を模擬するための海砂が重要な役割を担っていることが明らかとなった。海砂を含まずに液相だけを植え継ぐ場合よりも、海砂部分を新たな培地に添加した方が、良好なメタン生成を確認することができた。さらに集積された微生物について16S rRNA遺伝子塩基配列を解析した。関与しているメタン生成菌および細菌の種類を明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本研究の最終的な目標は原油分解メタン生成に関与する未知微生物の培養と生態解明であるが、H30 年度、n-アルカンからの中間産物として考えられる脂肪酸を用いて、微生物の集積培養に成功した。これにより原油分解過程に生産される中間代謝産物とその物質を分解する微生物について明らかにすることができた。脂肪酸を実際に分解してメタンを生成する培養系を獲得できたことは、より確実でより詳細な結果が得られる試料が獲得できたということであり、当初の計画以上に進展できている。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、この新規な脂肪酸分解微生物の分離を目指すとともにその性質を明らかにする。さらにこの微生物を原油分解メタン生成培養系に添加することによる、原油分解微生物の集積や機能促進の有無を確認する。
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