2018 Fiscal Year Annual Research Report
プラズマ計測と数値解析の協同によるホール推進機の電子輸送現象の解明
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17H04972
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Research Institution | Tokyo Metropolitan University |
Principal Investigator |
渡邊 裕樹 首都大学東京, システムデザイン研究科, 助教 (30648390)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 宇宙用電気推進機 / プラズマ / 航空宇宙工学 / ホール推進機 |
Outline of Annual Research Achievements |
放電室内部の電子の輸送現象を解明するために,数値解析コストが低い小型の100W級ホールスラスタを昨年度までに設計,製作し,今年度はこのスラスタの推進性能,真空度依存性および排気プルーム特性の評価を実施した. 昨年度本予算で整備したキセノン排気速度2,000 L/sの小型真空チャンバーとJAXA共同利用設備であるキセノン排気速度22,000 L/sの大型チャンバーの2つの実験環境を用いて,小型ホールスラスタの性能評価を実施し,真空チャンバー内圧力が1/6になると,同一作動条件でのアノード効率が最大で5%減少すること,また,放電電流振動が開始する磁束密度が低磁場側にシフトすることを確認した. また,大型チャンバーを用いた高真空環境下において,放電電流振動が比較的抑制されている放電電圧225 Vでの放電電力100 W作動時のホールスラスタヘッドの代表性能として,推力5.7 mN,比推力1,060 s, 推力電力比57 mN/kW, アノード効率0.30を確認し,現在各国が開発している小型ホールスラスタと同程度の性能であることを確認した. 加えて,昨年度までに設計,製作した排気プルームの計測装置を使用し,排気プルームを計測した結果,中型・大型ホールスラスタと比べて,放電電流振動を抑制するために必要な磁束密度が高磁場側にシフトすること,また,小型化に起因する狭い放電チャネルにより推進剤利用効率の低下も確認された.さらに,放電電流振動によりイオンの生成量に変化が生じることも明らかになり,これらの顕著な特性を数値解析が捉えることができるか,今後評価を進める必要がある.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
実験と数値解析の協同を進めるために,今年度は数値解析の検証に必要な実験データの取得と数値解析の実施を進める計画であった.概要に記述した通り,数値解析コストが低い100W級ホールスラスタの推進性能および排気プローム特性を順調に取得し,数値解析技術の評価に必要な実験データベースを整備することができた.また,流れの主体であるイオンと電子を粒子として取り扱った2次元のFull-PICコードによる100W級ホールスラスタの解析にも着手することができ,研究協力者と連携を取りながら,次年度以降,数値解析結果の評価を行える状況に達した.以上の観点から,研究は「おおむね順調に進展している」と自己評価する.
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Strategy for Future Research Activity |
今後はより詳細にホールスラスタ内部の流れの描像を捉えるために,放電チャネル内のプラズマ物性を高速移動機構と静電プローブを用いた方法により計測し,実験データベースの拡充を進める.一方で,数値解析技術に関しては,今年度から計算を開始した2次元のFull-PIC計算を進め,実験結果との比較評価を実施する.これにより,実験と数値解析からホールスラスタの電子輸送についての考察を進めるとともに,磁場強度,電場強度,推進剤密度に対する電子の移動度モデルを構築し,スラスタの設計ツールとして有用な2次元のHybrid-PICコードへの適用を試み,ホールスラスタ開発への貢献を目指す.
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Research Products
(6 results)