2018 Fiscal Year Annual Research Report
Irradiation Effects on Hydrothermal Corrosion of SiC
Project/Area Number |
17H04977
|
Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
近藤 創介 東北大学, 金属材料研究所, 准教授 (10563984)
|
Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
|
Keywords | 炭化ケイ素 / SiC / 腐食 / 防食 / 表面改質 / 格子欠陥 |
Outline of Annual Research Achievements |
原子炉の事故耐性を飛躍的に高めるため、炭化ケイ素(SiC)で炉心構造材(チャンネルボックスや燃料被覆など)を作る試みがある。しかし、SiCが中性子照射に晒される環境では、冷却水として使用される高温高圧水による減肉を伴う腐食が加速されること(照射加速腐食)が課題になっている。本研究では、照射によるSiCの加速腐食について、その原因の学術的解明とそれに基づいた耐食表面の開発を目標としている。より具体的には、照射によって導入された欠陥(空孔などの格子欠陥)に由来する表面構造の変化(原子配列構造やそれに伴うバンド構造の変化も含む)が加速する方向に変化させた、とこれまでの研究結果から予測しており、これを証明することを目的として設定した。初年度に単結晶3C-SiCを対象に電気化学試験(cyclic voltammetry)を室温HF中で実施し溶解挙動を調べたところ、腐食電流が照射線量の増大(つまり格子欠陥量の増大)に伴い増加する傾向を明確に捉えた(現段階では腐食電流と欠陥の材料中への蓄積量が1対1で相関があるのかは調査中)。30年度は本手法をほとんど絶縁体である多結晶材料に拡張するため電気化学セルと電極形状の開発を行った。現在、例えばターフェルプロットなどでは再現性の良い曲線が得られるに至っており、単結晶と同様の傾向が観測された。また、加速腐食が単結晶よりも顕著であり、粒界周辺でのカソード反応(溶存酸素の還元)が照射後に顕著に大きくなることがその原因であることを示すデータが得られている。これらの結果を鑑み、溶存酸素の還元の実体である溶存酸素からの正孔注入(より正確には注入された正孔の表面蓄積)を緩和すべく、正孔空乏層を形成するように表面をp型にしたSiCを作製した。オートクレーブでの腐食結果では著しい腐食速度の低減が認められており、これが狙ったメカニズムに由来するのか今後確認していく予定である。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究開始前は照射前のSiCの基礎的な電気化学データでさえなかったことを考えれば、その多結晶体を含めて測定手法の確立ができたこと、および徹底的に電気化学特性を評価し熱力学的観点からデータを揃えられたこと。また、セラミックスの表面処理により防食の顕著な兆候が得られたことは、本研究分野以外にも波及する結果であり「順調に進展している」といえる。最終目標である照射が及ぼす電気化学特性への効果は未だ明確にはできていないものの、当初の目的であった「原因の学術的解明」の第一歩である照射線量-腐食電流相関が取得できたことと防食が可能であることを示した点は、この研究の方向性に今のところ矛盾が無いことを示しており、研究方針の大幅な変更が必要ないことを示すものである。また、当初は2年目以降に予定していたイオン注入実験を初年度に前倒しして開始できだことにより、その他の表面改質法への試みが可能となるような時間的余裕が生まれている。現段階で得られた結果から考案した照射による腐食速度加速のメカニズムは、当初の予測の範囲内であるが、溶存酸素の還元がカソード反応であることが明らかになるなど新しい知見も既に得られており、実験結果とともに論文としてまとめ出版した。
|
Strategy for Future Research Activity |
現時点では当初の計画通り進行しており推進方策の大きな変更はないが、初年度および本年度でも実施したようにいくつかのテーマを併進させ、学術研究としての単結晶SiCを用いた電気化学試験・工学研究としての多結晶SiCを用いたオートクレーブによる腐食試験をそれぞれ中心に実施していく予定である。つまり、電気化学試験で腐食加速メカニズムの真理に漸近しつつ、現段階の知見で考えられる防食表面処理を実施し耐食性能の実証試験を行う予定である。これにより、時間短縮とよりインパクトの高い研究成果となることを期待している。
|