2017 Fiscal Year Annual Research Report
ミュータジェネシスによる脳腫瘍ドライバー遺伝子の同定と、腫瘍微小環境の解析
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17H04988
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
高祖 秀登 東京大学, 医科学研究所, 特任講師 (50612876)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | トランスポゾン / 脳腫瘍 / グリオーマ / 腫瘍微小環境 |
Outline of Annual Research Achievements |
当該年度においては、グリオーマが形成するトランスポゾン・ベクターの開発を行った。Sleeping BeautyトランスポゾンベクターにPDGFA、Trp53とNf1に対するshRNAを導入し、細胞にトランスフェクションした。その結果、Trp53、Nf1の発現が低下した。このトランスポゾンベクターをマウス側脳室にエレクトロポレーションしたところ、脳腫瘍の形成が認められた。腫瘍の組織学的な解析から、オリゴデンドロサイトの前駆細胞が増殖していることが明らかとなった。また、トランスポゾンベクターを2つに分けて、片方にはPDGFA、もう片方にはTrp53とNf1に対するshRNAを組み込んだ。前者はDsRedを発現し、後者はGFPを発現する。2つのベクターを同時にエレクトロポレーションすることで、両方のベクターが同時に導入された細胞が黄色、片方のベクターが導入された細胞は、赤か緑に標識することができた。この手法を用いることで、遺伝学的に異なる変異を有する細胞を、異なる蛍光で標識した。
脳腫瘍の細胞と腫瘍微小環境の相互作用を調べるために、脳腫瘍の細胞をGFPで標識できるマウスを作製した。一方で、腫瘍微小環境におけるマクロファージ系細胞を可視化するために、マクロファージ系細胞が赤色の蛍光で標識されるマウスの作製に着手した。ES細胞の適切な遺伝子座にtdTomatoをノックインして、ES細胞からキメラマウスを作製した。キメラマウスを戻し交配することで、Germlineにのったマウス系統を確立した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
該当年度の研究目的として、グリオーマ形成を誘導できるトランスポゾン・ベクターの作製を進めることが一つであった。その点に関して、作製したベクターの性質をin vitroの培養系と、in vivoの実験系を用いて検証する中で、ベクター導入によって標的遺伝子の発現変化が誘導できることが分かり、また個体レベルでもグリオブラストーマの形成が誘導できることが分かった。そのため、本研究で開発したベクターが研究ツールとして有用であることが立証できた。さらに、2つのトランスポゾン・ベクターを同時にエレクトロポレーションしたところ、それぞれのトランスポゾン・ベクターが導入された細胞を、異なる蛍光タンパクで可視化できることが明らかになった。これらの実験から、トランスポゾン・ベクターのco-electroporationは、腫瘍内の遺伝学的な不均一性を明らかにすることができる有用な手法であることを立証できた。また、グリオーマの腫瘍微小環境を解析するために、マクロファージ細胞を可視化するマウスの作製に着手した。その結果、目的とするES細胞を単離することができた。また該当する細胞が生殖系列に乗ったマウスを得ることができた。これらの結果から、グリオーマの腫瘍微小環境を詳細に解析するツールを揃えることができた。以上から、研究はおおむね順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究で開発したトランスポゾン・システムをPiggybacの系に入れ替える。Piggybacシステムを用いてグリオーマを誘導し、一方で、Sleeping Beautyシステムを用いて、トランスポゾン・ミュータジェネシスを活性化する。癌幹細胞を単離して移植し、グリオーマの形成を促進する遺伝子変異を探索する。一方で、グリオーマ細胞と腫瘍微小環境を構築するマクロファージ細胞の可視化に取り組む。マクロファージ細胞が可視化出来るマウスにおいてグリオーマの形成を誘導し、グリオーマ細胞の挙動と、マクロファージ細胞の挙動をexplantで観察する。まずは両者の局在を明らかにし、さらにライブイメージングの系を用いることで、両者の相互作用を解析する。
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