2018 Fiscal Year Annual Research Report
遺伝子修復治療を可能にする正確なゲノム編集技術の開発
Project/Area Number |
17H04993
|
Research Institution | Tokyo Metropolitan Institute of Medical Science |
Principal Investigator |
宮岡 佑一郎 公益財団法人東京都医学総合研究所, 生体分子先端研究分野, プロジェクトリーダー (20549521)
|
Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
|
Keywords | ゲノム編集 / HDR / NHEJ / Cas9改変体 / ノックイン / 相同組換え / 非相同末端結合 |
Outline of Annual Research Achievements |
CRISPR/Cas9によるゲノム編集には、相同組換え (HR)、非相同性末端結合(NHEJ)、マイクロホモロジー媒介末端結合(MMEJ)などがある。このうち、HRは、正確で自在なゲノム編集を達成するために非常に有益であるが、その頻度はNHEJやMMEJに比べて極めて低い場合が多い。 前年度までに、eSpCas9(1.1)とSpCas9-HF1という改変型Cas9がHR活性を亢進することを見出していたが、今年度はさらに新たに報告されたHypaCas9という改変型Cas9のHR活性を検討した。その結果、eSpCas9(1.1)やSpCas9-HF1よりも効率よくHRを誘導し、NHEJ/MMEJを抑制することが明らかとなった。また、これまで一塩基置換の導入効率を用いてHR活性を評価していたが、改変したCas9が数千塩基のDNA断片のノックイン効率も同様に向上させるかを検討した。ノックインには野生型Cas9、eSpCas9(1.1)、SpCas9-HF1、HypaCas9を用いた。その結果、改変型Cas9ではノックインの際に生じるNHEJ/MMEJ頻度も低下する傾向が認められた。また、ノックイン効率をピューロマイシン耐性の獲得頻度として評価したところ、改変型Cas9では、野生型Cas9よりも高い頻度で耐性を獲得し、ノックイン効率も向上することが明らかとなった。検討した3種類の改変型 Cas9のうち、数千塩基のDNA断片のノックインでもHypaCas9が最もNHEJ/MMEJ活性の抑制とHR活性の向上に有効であることが明らかとなった。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
HypaCas9が新たなCas9改変体として、一塩基置換だけでなく、ノックインにおいてもHR活性を高め、NHEJ/MMEJ活性の抑制に有効であることが明らかになった。また、これまでに得られた結果を論文として発表することができた(Kato-Inui, Nucleic Acids Research 2018) 。これらの改変は、生体内ゲノム編集に有用な小型のCas9であるSaCas9に有効であると予想されるため。
|
Strategy for Future Research Activity |
これまでに得られた、HR頻度を向上させ、NHEJ/MMEJ頻度を抑制するためのアプローチを複合的にSaCas9に適用し、正確なゲノム編集を誘導可能な小型のSaCas9を作製し、生体内ゲノム編集に向けて準備を進める。また、ウィルソン病患者由来iPS細胞のATP7B遺伝子の変異の修正も、改良したCRISPR/Cas9のゲノム編集条件を駆使して実施する。
|