2017 Fiscal Year Annual Research Report
Structural basis of signal transduction mediated by various GPCRs
Project/Area Number |
17H04999
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
幸福 裕 東京大学, 大学院薬学系研究科(薬学部), 特任助教 (80737940)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 核磁気共鳴法 / Gタンパク質共役型受容体 / 膜タンパク質 / 構造生物学 / シグナル伝達 |
Outline of Annual Research Achievements |
Gタンパク質共役型受容体の一種であるが、細胞外領域で高分子量のリガンドと結合するという点で特徴的な、ケモカイン受容体CXCR4について、以下の解析をおこなった。まず、精製時の界面活性剤および結合させるリガンドを最適化することにより、シグナル伝達アッセイや核磁気共鳴(NMR)法を用いた構造解析に十分な収量・精製度・活性割合にて、CXCR4を調製する方法を確立した。CXCR4依存的なGタンパク質への[35S]-GTPγSの結合量を解析することで、様々なリガンドが結合したCXCR4のシグナル伝達活性を解析した結果、ケモカインCXCL12がシグナル伝達を誘起する一方で、低分子量アンタゴニストおよびCXCL12のN末端欠失体がシグナル伝達を誘起しないことがわかった。CXCR4のメチオニンメチル基を選択的に安定同位体標識した上で、様々なリガンドが結合した状態のNMRスペクトルを測定した。その結果、CXCR4のメチオニンメチル基に由来するNMRシグナルを観測することに成功した。観測されたNMRシグナルの化学シフトが、低分子量アンタゴニスト結合時とCXCL12結合時で顕著に異なることから、リガンド依存的にCXCR4の膜貫通領域の構造が変化することが明らかとなった。 また、Gタンパク質共役型受容体のリン酸化依存的なシグナル伝達メカニズムを解明した。β2アドレナリン受容体を、ナノディスクの脂質二重膜に再構成し、Gタンパク質共役型受容体キナーゼによるリン酸化をおこなった上で、NMR法により解析した。その結果、β2アドレナリン受容体のC末端領域がリン酸化されると、膜貫通領域と相互作用することで、膜貫通領域をアレスチンの結合に適した構造に変化させることがわかった(Shiraishi et al., Nat Commun, 2018)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当初の計画では、平成29年度は、ケモカイン受容体CXCR4の試料調製法の確立、シグナル伝達アッセイ、およびNMR解析をおこなうこととしており、これは予定通りの進捗となっている。一方で、当初の予定にはなかった、別のGタンパク質共役型受容体であるβ2アドレナリン受容体について、リン酸化依存的なシグナル伝達の機構を解明し、これを投稿論文として発表することができた(Shiraishi et al., Nat Commun, 2018)。このことから、本研究は当初の計画以上に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
平成29年度は、ケモカイン受容体CXCR4のNMR解析をおこない、リガンド依存的な構造変化を解析することに成功した。ケモカイン受容体は、細胞外領域で比較的高分子量のリガンドを結合するという点で、Gタンパク質共役型受容体の中でも特徴的である。そこで、膜貫通領域で低分子量リガンドを結合するGタンパク質共役型受容体と、その構造変化様式の違いを比較することを考えている。比較対象としては、同じクラスA、γサブファミリーに属し、Giタンパク質を活性化する、μオピオイド受容体を選択し、対応する位置にメチオニン残基をプローブとして変異導入することで、両者の比較をおこなうことを計画している。
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