2018 Fiscal Year Annual Research Report
最先端遺伝学・光遺伝学技術を駆使した哺乳類細胞の等分裂制御原理の追究
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17H05002
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
清光 智美 名古屋大学, 理学研究科, 講師 (10503443)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 光操作 / ダイニン / NuMA / 紡錘体配置 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は以下の主要テーマについて研究を進めた。 1.ダイニン-NuMA複合体の細胞内再構成と紡錘体牽引力生成メカニズムの解明 2.ダイニン-NuMA複合体の細胞皮層と紡錘体極における制御機構の保存性と違いの解明 3.染色体派生Ran-GTP濃度勾配によるNuMAの制御 まず、1の成果を、論文で公表することができた(Okumura M, Natsume T, Kanemaki MT, Kiyomitsu T, eLife 2018)。昨年度までの成果に加え、ダイニン活性阻害剤(Ciliobrevin-D)を用いることによって、 NuMAの光操作による紡錘体牽引力がダイニンの活性に依存することを証明した。またオーキシン誘導デグロン(AID)による内在性NuMAの分解と、変異体NuMAの誘導系を組み合わせた、置換実験系を樹立し、NuMAのclustering活性が紡錘体極機能には必要ではなく、細胞皮層での星状体微小管の結合/牽引に必要であることを証明した。また同じ実験系を用いて、2において、NuMAの2つの異なる微小管結合ドメインが紡錘体極における微小管の収束と、細胞皮層における星状体微小管の結合/牽引にそれぞれ機能することを明らかにした。また3については、RCC1 (RanGEF)、RabGAP1、Importin-βのオーキシン誘導デグロン(AID)細胞を樹立し、ヒト体細胞において、RanGTPの濃度勾配が、NuMAの紡錘体極局在と機能には関与せず、HURPとImportin-βの動原体微小管の染色体側領域への結合に必要であることを明らかにした。3の結果の一部は、プレプリントサーバーbioRxivにも報告した(Tsuchiya et al., 2018 doi: https://doi.org/10.1101/473538)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
まず、1の成果を論文に公表できた。一方、3の成果をまとめた論文は却下されてしまったが、現在2の成果と合わせ、かつこれまでとは異なるHURPの極性化モデルを提唱し、論文を作成している。またオーキシン誘導デグロン(AID)の利点を活かし、分裂期中期にRCC1を分解する実験系を新たに構築し、これまでなし得なかった分裂期中期でのRCC1の急速分解に成功した。この実験系を用いることで、RanGTPは紡錘体が形成された後でもHURPの極性化維持に機能することを明らかにし、その局在制御は中期紡錘体長の制御にはあまり関与しないことも示すことができた。これらの成果も含め、今年度の前半には論文を再度投稿する予定である。その後は、その中期分解系をRCC1のみならずダイニンやNuMAにも適用し、中期紡錘体極における、ダイニンとNuMAの機能の違いについて成果をまとめ、論文を作成する。すでにダイニンとNuMAの中期分解表現型には質的な違いが見られ、一部のダイニンはNuMAと独立に紡錘体極での微小管の収束に機能していることが示唆されている。またNuMAとは独立に働くダイニンを生み出す仕組みとして、Plk1によるリン酸化制御について検討している。
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Strategy for Future Research Activity |
オーキシン誘導デグロンとAPC/C阻害剤を用いてタンパク質の中期分解系を樹立したが、今後は微小管重合阻害剤のNocodazoleも用いて、タンパク質の前中期分解系も樹立し、NuMA等の紡錘体形成因子がいかに分裂期にRanGTPの制御を受けて機能するのかを詳細に検討する。また光操作技術に関しては、ダイニンのみならず、細胞皮層のミオシンを同時に操作することにより、娘細胞サイズを操作する技術の確立を目指す。さらに紡錘体牽引の仕組みについては、in vitro再構成や超解像顕微鏡などの新しい技術も導入して、Okumura et al., eLife 2018で提唱したモデルを検証する。またこれまでヒト培養細胞で樹立したゲノム編集、光操作、オーキシン誘導デグロン等のツールをマウスES細胞や脊椎動物の初期胚に応用し、ダイニンやNuMAの可視化や操作を進める。実際すでに名古屋大学内の専門家と共同研究を進めており、脊椎動物の初期胚における微小管動態の生細胞での可視化に成功した。
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