2017 Fiscal Year Annual Research Report
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17H05014
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
高橋 一男 岡山大学, 環境生命科学研究科, 准教授 (10450199)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 隠蔽変異 / HSP90 / ゲノムワイド関連解析 |
Outline of Annual Research Achievements |
遺伝的ロバストネスは、遺伝的な攪乱に対する恒常性を意味し、遺伝的キャパシターによって維持されていると考えられている。現在、その有力な候補と考えられているのは、分子シャペロンの一つであるHSP90であるが、その恒常性維持機構は未解明である。キイロショウジョウバエには、DGRP(Drosophila Genetic Reference Panel)と呼ばれるゲノム解読済み系統が約200系統存在している。これらの系統は、SNP(一塩基多型)の分布が判明している事から、ゲノムワイド関連解析を行うのに適した研究材料である。本研究では、このDGRP系統にHSP90阻害剤であるゲルダナマイシンとラディシコールを投与する処理と対照処理を施す事で、HSP90の機能を阻害した状態と対照の状態で網羅的に表現型の評価を行った。平成29年度には、雄の交尾器形態についての解析を行い、HSP90異存的に表現型への効果が変わるSNPが多数特定された。これらのSNPの中には、HSP90の機能が正常な条件下では表現型への効果が低い一方で、HSP90の機能が阻害された時に表現型に強い影響を及ぼすものもあり、HSP90によって隠蔽されている隠蔽変異の一部が明らかになったと考えられる。現在は研究成果を論文化し、学術雑誌に投稿中である。 平成29年度には網羅的な表現型計測のための様々な検討を進めた。ショウジョウバエ幼虫発育期間の自動計測システムの実装準備を行い、機器の調整および、予備実験を行った。また、同様にハイパースペクトルカメラを用いた、翅の構造色の定量化手法の検討も行った。400nmから800nmまでの可視光領域の波長を5nm毎のバンド幅で計測し、ハイパースペクトル情報とその空間位置情報を活用し、ショウジョウバエの性的二型や種間差などを検出できる手法を確立した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
購入を予定していたハイパースペクトルカメラの仕様の決定に時間がかかり、かつ実際の定量化法の確立には、翅サンプルの準備の仕方や、光源の種類を始めとして、様々な試行錯誤が必要であったため、網羅的な表現型計測のための検討にやや遅れが生じた。
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Strategy for Future Research Activity |
平成29年度に検討を進めていた、ショウジョウバエ幼虫発育期間の自動計測システムの実装の最終調整を行い、DGRP系統の発育期間計測を開始する。また、同様に平成29年度から検討を進めていた、ハイパースペクトルカメラを用いた翅の構造色の定量化手法の最終調整を行い、DGRP系統の翅構造色の計測を開始する。その他、翅形態の幾何学的形態測定学的評価なども行い、表現型データの大量取得を行う。これらのデータに基づいて、ゲノムワイド関連解析を行うとともに、統計モデリングの更なる検討を行う予定である。
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