2017 Fiscal Year Annual Research Report
外洋性海鳥の帰巣行動に関する認知生態研究:種内・種間比較に基づく統合的アプローチ
Project/Area Number |
17H05017
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Research Institution | National Institute of Polar Research |
Principal Investigator |
塩見 こずえ 国立極地研究所, 研究教育系, 助教 (50756947)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 帰巣 / ナビゲーション / 海鳥 / 認知生態学 / 種間比較 / 個体群間比較 / ミズナギドリ |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、海鳥(ミズナギドリ科Calonectris属)が繁殖地から数百km離れた外洋の餌場から巣へ帰り着くプロセスと、その帰巣パターンがどのような外的・内的制約の下で形成されてきたかを解明することである。帰巣経路や知覚特性(視覚・嗅覚)を、地理的条件や移動距離が大きく異なる環境で繁殖する個体群間および種間で比較することによって、帰巣に必要な環境条件や認知メカニズムを探る。2017年度分の研究計画からは、以下4項目の成果を得た。
1) 伊豆諸島御蔵島で繁殖するオオミズナギドリ計16羽にGPSロガーを装着し、約1ヶ月間の移動経路を記録した。これにより、1000 km 以上離れた餌場から数日かけて帰巣するという御蔵島個体群特有の経路データが得られた。2) 岩手県沿岸の無人島で繁殖するオオミズナギドリの帰巣経路データから、その時空間パターンを形成する要因について分析した。これまで注目されてこなかった、生態的・認知的な要因の複合的な関与について初めて明らかにした。3) 頭蓋骨分析によって視覚・嗅覚に関わる脳領域の発達度の評価するために、御蔵島で見つけた1羽のオオミズナギドリ成鳥の死体を持ち帰った。4) 個体群間比較研究の基礎情報として、オオミズナギドリの遺伝的個体群構造を明らかにする必要がある。御蔵島で捕獲した計35羽のオオミズナギドリから遺伝子分析用の羽毛サンプルを採取した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
御蔵島個体群の帰巣経路データの取得・帰巣経路データの種内および種間比較解析・遺伝子サンプル収集、については、計画した通りの内容で進められている。視覚・嗅覚特性を推定するための死体の収集については、繁殖地内で死体(特に新鮮な死体)を見つけることが難しく、目標数を達成できていない。
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Strategy for Future Research Activity |
Calonectris属4種から得た帰巣経路データについては、まず個体群ごと種ごとに詳細な分析と報告をした上で、個体群間(種内)および種間比較の結果をまとめる計画である。遺伝子分析と頭蓋骨分析については専門家に協力を依頼する。
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