2017 Fiscal Year Annual Research Report
アミノ酸の同位体比分析を用いた古栄養学の確立に資する基礎的研究
Project/Area Number |
17H05018
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
内藤 裕一 名古屋大学, 博物館, 研究員 (10754848)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | アミノ酸 / ケラチン / ガスクロマトグラフィー |
Outline of Annual Research Achievements |
人体組織の安定同位体比は栄養状態・生理状態に影響を受けることが報告されているが,体組織同位体比に対する各要因の影響の程度やメカニズムに関する基礎データが不足している。本研究では技術的制約から特にデータの乏しい化合物単位での安定同位体分析を用いた栄養状態・生理状態の解析法を開発し,先史時代人の古栄養学・古病理学研究に同手法を応用することを目的としている。 研究開始初年度である本年度は実験環境の整備に比較的多くの時間を割いた。GC/MS(ガスクロマトグラフィー/質量分析計)の新規導入および運転の開始、特定アミノ酸の分離同定法の検討を実施した。特に頭髪や爪等の体組織を構成する主要タンパク質・ケラチンの成分であるシステイン・シスチンのGC/MS分析に焦点を当てた。酸化反応と各種の誘導体化法を用いた既存の分析方法に検討を加え、複数の誘導体化試薬を用いたいくつかの有望な分析プロトコルを考案した。これらの手法については、現在再現性の確認やさらなる方法論の改良を試みている最中である。 一方、本研究計画の到達目標である過去の人々の栄養状態を復元するために、新たに国内外の古人骨等の考古学資料・人類学資料の収集を行った。後期旧石器時代から新石器時代、歴史時代を含む様々な時代と地域の資料が充実しつつある。また今後の方策の箇所でも述べたが、動物実験の実施が困難な状況となったため代替となる動物資料の検討を行った。具体的には別機関における飼育実験の依頼、また自然状態で栄養不足を経験した野生動物試料の利用を検討した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究計画の予算のうち最大の支出であるGC/MSの導入と稼働が滞りなく進んでいる。計画していた特定アミノ酸の分析法の開発も進んでおり、今後の実試料の分析にも目処が立った。過去の資料については元からあるものに加え、さらなる資料の収集も行っている。
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Strategy for Future Research Activity |
GCを用いた分析法の開発をさらに進める。プロトコルが完成し次第、現代人の頭髪試料・考古資料等の実資料の分析を順次実施する。所属機関の変更に伴い利用できなくなった機器類があるため、新たに当該機器を保有する機関との共同研究を開始する。特に同位体比分析を行える機関との連携を検討中である。また計画していた動物実験は現所属機関での実施が困難であるため、研究協力者との共同作業とする方策を考えている。当面は現代人の試料を中心に分析を進める予定である。
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