2018 Fiscal Year Annual Research Report
腸内細菌におけるプラズマローゲン生合成機構の解明と応用展開
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17H05025
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
安藤 晃規 京都大学, 農学研究科, 助教 (10537765)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | プラズマローゲン |
Outline of Annual Research Achievements |
近年、プラズマローゲンリン脂質が、生体の恒常性維持に重要な機能を担うことが明らかにされ注目を集めている。しかし、その体内動態や具体的な生理機能は不明である。そこで微生物由来プラズマローゲンに着目し、分布、形態、組成を精査し、さらに生合成経路の解明に取り組む。 前年度までに、微生物のプラズマローゲン生産能をOrbitrap-LC/MSによる定性分析にて評価していたが、定量分析系は確立していなかった。そこで本年度は、三連四重極型LC/MS/MSによる多重反応モニタリング(MRM)プログラムを用いて、エタノールアミン型プラズマローゲン(PlsEtn)の定量分析を試みた。前年度に見い出したプラズマローゲン生産菌を対象に、sn-1、sn-2位それぞれのアシル基の炭素鎖長12~30、不飽和度0~5の組み合わせからなるPlsEtn約3000種について測定したところ、PlsEtn32:0(16:0/16:0)やPlsEtn34:1(16:0/18:1)など、上位10種のPlsEtnが全PlsEtnの約90%を占めていることが明らかとなった。また、この結果は、前年度に行なったOrbitrap-LC/MSによる分析結果とも合致した。 MRMによる測定では、一度に検出できる分子種の数に限りがあるため、効率的な分析のためには測定対象となる分子種を絞る必要がある。そこで、上記の結果をもとに、存在比率の高いPlsEtnを対象とするMRMプログラムを構築することで、微生物PlsEtnのLC/MS/MSによる効率的な半定量定性分析が可能となった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
プラズマローゲン生産菌の探索に有用な分析系を確立し、プラズマローゲン生産菌を多数見い出し、属レベルでの同定を行なうとともに、生産されるプラズマローゲンの分子種を詳細に分析し、細菌におけるプラズマローゲンの組成分布をある程度明らかにした。前年度までに、微生物のプラズマローゲン生産能をOrbitrap-LC/MSによる定性分析にて評価していたが、定量分析系は確立していなかったが、三連四重極型LC/MS/MSによる多重反応モニタリング(MRM)プログラムを用いて、エタノールアミン型プラズマローゲン(PlsEtn)の定量分析が可能になった。
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Strategy for Future Research Activity |
・生合成経路上の想定される中間体と蓄積菌を用いた休止菌体反応により生合成経路の推定を行う。脂質合成系阻害剤や、合成中間体として想定されるホスファチジン酸、リン脂質合成中間体、リゾリン脂質など様々な脂質や、通常蓄積しない奇数鎖脂肪酸や、多価不飽和脂肪酸、また、酸化系、還元系の経路からのプラズマローゲン生成の可能性も考慮し、多様な基質を添加し、生成するプラズマローゲン組成・中間体から生合成経路を推定する。 ・ゲノムが公開されているもの、分子育種法が確立している種からプラズマローゲン蓄積株を選抜し、種々の条件下、蓄積時と非蓄積時のオミックス解析を行い、生合成に関与する遺伝子群、酵素群を明らかにする。 ・生合成経路推定解析、オミックス解析、ランダム変異解析、破壊遺伝子相補解析情報を統合し、生合成の関与するシグナル伝達系、転写因子、また、関連酵素群と生合成経路を明らかにする。また、鍵酵素であるアルケニル基生成に関与する酵素群の大腸菌による発現・精製を試み、先の検討で想定した生合成経路の中間体を活用し酵素の特徴づけを行う。さらに、解析対象の微生物と同属のプラズマローゲンを蓄積しない菌を対象に、プラズマローゲン生合成関連遺伝子群を導入し、プラズマローゲン蓄積能の付与を試みる。
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