2018 Fiscal Year Annual Research Report
造礁サンゴを用いたアラゴナイト・カルサイト問題への挑戦
Project/Area Number |
17H05034
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
樋口 富彦 東京大学, 大気海洋研究所, 特任研究員 (40570510)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | アラゴナイト / カルサイト / バイオミネラリゼーション / 造礁サンゴ |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、造礁サンゴの骨格形成に関わるタンパク質に着目し、海洋生物がカルサイトとアラゴナイトをどうやって作り分けているのか、造礁サンゴがカルサイト(またはアラゴナイト)を能動的に作るのか、受動的に作るかを明らかにすることを目的に研究を進めている。 平成30年度は、沖縄県で採集したプラヌラ幼生を用い実験を行った。サンゴ骨格は一般にアラゴナイト結晶からなるが、海水中のMg/Caを変化させることにより、 カルサイト骨格を有したサンゴを作成した。X線回折およびMeigen染色法により、アラゴナイト・カルサイトの有無を確認すると同時に、網羅的遺伝子解析(RNA-seq)でサンゴのアラゴナイト・カルサイト生成に関わる遺伝子を抽出した。 Mg/Caが5.2の通常海水(アラゴナイトを作りやすい条件)で成長させたサンゴと、Mg/Caが0.5の人工海水(カルサイトをつくりやすい条件)で成長させたサンゴの遺伝子発現量を比較したところ、約1280の遺伝子で発現上昇が見られ、約750の遺伝子で発現減少が見られた。特に、ectinやgalaxinなど68の骨格形成関連の遺伝子発現が上昇した。発現減少したのは、機能のわかっていないuncharacterized skeletal organic matrix protein 5など6つの骨格形成関連遺伝子であった。この結果により、サンゴがアラゴナイト骨格を作るため積極的に骨格形成にかかわる遺伝子を発現させている可能性が示唆された。つまり、造礁サンゴは能動的にアラゴナイトを作ろうと試みていることが考えられる。ただし、Mg/Caが0.5の海水では、受動的に生成するカルサイトが大部分を占めていた。このことにより、低Mg/Ca海水下では、サンゴが遺伝子発現上昇により能動的にアラゴナイトを生成しようとしても、受動的にカルサイトが生成してしまことが明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初より予定していた遺伝子発現解析について実験が概ね終了し、論文投稿まで進められているため。
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Strategy for Future Research Activity |
アラゴナイト・カルサイト骨格を形成したサンゴのRNA-seq解析に基づき、31年度はRNA-iによる骨格形成阻害の有無、Ca同位体染色を用いたNano-SIMSでの初期骨格形成の可視化に着手する。また、RNA-seq解析結果の論文公開を目指し、研究成果を広く普及する。
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Research Products
(3 results)