2017 Fiscal Year Annual Research Report
Rural Women's Empowerment and Human Security
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17H05036
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
高篠 仁奈 東北大学, 農学研究科, 准教授 (80507145)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 農業経済学 / ジェンダー |
Outline of Annual Research Achievements |
インドでは,半数以上の女性が「何らかの理由による家庭内暴力」に同意するという調査結果がある.本研究は,農村女性の地位と権利意識を決定づける社会・経済的要因を明らかにし,ヒューマンセキュリティ(人間の安全保障)の観点から,女性のエンパワメント(能力・地位の向上)に資する知見を探る.平成29年度は,インドのMeghalaya州農村において,以下の課題について回答を求めることを目指した調査研究を行った.
①女性の地位・意識を決定づける要因は何か: 調査で収集した家計データに基づき,農村女性の移動に関する自由度や家族計画の実施に関する決定要因を明らかにした.この成果は,研究協力者により日本農業経済学会で報告(ポスター賞受賞)され,現在,論文を投稿中である. ②現地NGO・政府が支援を行う上での制約とその解決法は何か: 今年度5月に,第2回目の現地調査を実施した.家庭内暴力や家族計画に関する啓蒙支援について,NGOと政府の役割に焦点を当てた調査を20カ村で実施した.この調査からは,女性問題に関わる組織がどのように連携しているかが明らかとなり,支援される側(農村女性)と支援する側(現地NGO・政府)との間で,問題認識にずれがあるという実態が観察された.この成果は,東北農業経済学会にて報告し現在投稿中である. ③女性の政治参加に関する意識を決定用意は何か: 今年度12月から1月にかけて現地調査を実施し,集めた家計データの分析結果を論文にとりまとめた.この成果は来年度8月に国際学会で報告する予定である.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究協力者と協働しながら調査を予定通り実施している.予備調査を通して得られた情報から,計画に微修正を加えているが,必要な変更であり,成果報告も滞りなく実施されているため,調査研究は順調に進行している.
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Strategy for Future Research Activity |
来年度は,今年度の調査で収集した家計データを用いて,母系社会と父系社会との比較分析を行う.平成29年度の調査では,母系社会であるメガラヤ州カシ族300件のデータを,父系社会であるアッサム州カルビ族250件のデータを収集している.両地域は,社会経済条件が似通った条件にあるが,社会制度・政治制度が異なるため,制度の差異が女性のエンパワメントに与える影響を比較することが可能である.また,平成30年度の夏季にはバングラデシュのクルナ州において,スラムにおける女性のエンパワメント状況に関する予備調査を実施する予定である.これらの調査から得られた成果は,国内外の学会で報告し,学術誌への投稿を目指す.
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