2017 Fiscal Year Annual Research Report
Microbial induced desaturation technique for ground applying denitrification
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17H05038
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
中野 晶子 九州大学, 農学研究院, 助教 (10631286)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 不飽和化 / 脱窒 / 砂 / バイオガス / バイオグラウト / 微生物 / 地盤改良 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的である、脱窒反応による「バイオグラウト」と「バイオガス」の生成による、砂の不飽和化技術の確立にあたって、初年度はまず、脱窒菌の自然堆積土壌からの抽出と培養条件の確立を目指した。培養液中に含まれる各溶質の濃度バランスやpHは、微生物の活性に影響を与え、場合によっては不活性ガスの生成につながる可能性があるので注意が必要である。 砂の地盤模型を作成し、上記で得られた培養の最適条件を適用することで、模型内部での脱窒反応の誘発に成功した。また、反応に伴って水で飽和していた砂の不飽和化が確認できた。これは、微生物反応に伴う「バイオガス」の生成によって、土中水の間隙水圧が上昇することで土中水が徐々に排水されることによる。 また脱窒に伴い生成する「バイオグラウト」による間隙構造の変化について、デジタルマイクロスコープを用いた画像観察や通気試験による間隙径の測定を行った。その結果、グラウト生成の程度や反応による間隙径の変化は、用いる砂試料の粒径やその分布によって差が生じた。 上記研究から得られた成果については、平成30年2月に、バイオガス生成時に間隙内で発生する過剰間隙水圧とバイオガスの成長速度予測から、脱窒反応による不飽和化のプロセスを論じた論文「Microbe-induced desaturation of sand using pore pressure development by way of denitrification」を学術雑誌Geotechnique Lettersに発表した。 平成30年3月にアメリカで行った、研究協力者Dr. Leon van Paassen(アリゾナ州立大学)の研究チームとの研究交流会での意見交換から、脱窒によるバイオガス生成と土中移動の評価の一つとして、画像解析に関する新たな知見を得ることができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
自然環境から採取した底泥を用いて、土中の脱窒菌の抽出培養を行った。脱窒に必要な反応基質を与えるために、用いる化合物の種類やそれらの濃度、各基質の割合を変化させ、最適な培養条件を決定した。ただし、当初予定していた微生物分析をするには至らなかった。 決定した培養条件を適用し、反応液と微生物溶液を砂地盤模型に通水させ、土壌水分量の経時変化を測定した。また、砂地盤模型に間隙水圧計を埋め込み、バイオガス発生中の土中の間隙水圧を測定した。その結果、反応に伴い飽和度は低下し、反応中は間隙水の過剰間隙水圧の発達がみられた。この土中の圧力勾配により、砂模型上部から間隙水の排水が起こり、飽和度が進むことを実験から示すことができた。この砂地盤の模型を用いた反応実験では、添加する微生物培養液の濃度によって、不飽和化の進行速度や平衡状態に達した際の最終的な飽和度の値に違いが出たため、今後微生物分析を通して微生物活性の定量化の必要性を見出した。また、実験条件をいくつか変化させることで、砂地盤の不飽和化に影響する諸因子についての知見が得られた。 脱窒反応前後での砂間隙の間隙径の変化を測定するために行った通気試験では、バイオグラウトの生成によって間隙径のある程度の変化を定量することができた。しかし本試験方法では、画像観察で観察されるような微細領域での変化は測定値には反映されていない可能性が高く、また、土中でグラウトが不均一に分布した場合、正確な定量はできない。 脱窒反応前後での砂の透水性の変化を評価するために行った透水試験では、通常の飽和土に用いる透水試験装置を使用したため、反応後に不飽和化が大きく進んだ試料に対しては正確な透水係数の決定ができなかった。今後は、不飽和状態にも対応できるよう試験装置の改良が必要である。
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Strategy for Future Research Activity |
初年度の研究では、模型実験を通して微生物反応や不飽和化に影響を及ぼす諸因子について、いくつかの知見を得たことから、今後は、これらの影響因子について追加の実験と解析を通して、脱窒による不飽和化プロセスのより詳細な理解と対象とする地盤環境における飽和度変化の予測手法の確立を目指す。 また、反応後の土質特性の変化について、とりわけ、透水性や保水性の変化、飽和度低下による砂地盤の安定性の評価を行う。 さらには、反応の過程で生成する「バイオガス」と「バイオグラウト」の相互作用の検討を目指し、学内外の微生物工学系の専門家や海外研究者との意見交換と情報収集を積極的に行っていく。 研究協力者であるDr. Leon van Paassenの研究チームとの意見交換から得られた新たな知見を応用し、砂地盤模型中の三相構造(固体(砂・グラウト)・液体(間隙水)・気体(バイオガス))の脱窒反応前後の変化を視覚的にとらえるための画像解析手法について検討する。
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Research Products
(7 results)