2017 Fiscal Year Annual Research Report
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17H05047
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
木内 隆史 東京大学, 大学院農学生命科学研究科(農学部), 助教 (60622892)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | カイコ / 休眠 / ゲノム編集 / トランスクリプトーム / ChIP-seq |
Outline of Annual Research Achievements |
胚休眠制御カスケードの全容を解明するために、下記の5つの課題に取り組んだ。 1. 私たちが独自に同定したZ染色体上に座乗する休眠制御遺伝子Lmは転写因子をコードしていた。本研究ではLm制御下にある遺伝子を同定するためにChIP-seqを行うことを予定しているが、そのためにはLm遺伝子の上流にFLAGタグを導入したノックインカイコを作出する必要がある。カイコにおけるCRISPR/Cas9システムの変異導入効率が悪くノックインを試みるまでに至らなかったが、条件検討の結果、高確率で変異導入が行える系を確立することができた。 2. Lm遺伝子の下流にEGFP遺伝子を導入したノックインカイコを作出しようとしたが、上記と同じ理由で作出できなかった。一方、将来的にLm発現細胞におけるトランスクリプトーム解析を行うため、脳からGFP陽性細胞を分取する系の条件検討を行った。 3. 常染色体上に存在する新規休眠制御遺伝子Lm-2を同定するために、ポジショナルクローニングを行った。しかし、BC1個体の休眠性が分離せず、すべての個体が休眠性を示してしまった。そのため、形質が分離する飼育条件を再検討した。 4. pndおよびpnd-2は、休眠ホルモンに曝された卵から発生する胚子が休眠に入るときに機能する遺伝子である。正常カイコとノックアウトカイコの卵を産下直後から経時的にサンプリングしたものからRNAを抽出し、RNA-seqに供する準備を行った。 5. ヤママユガ科であるシンジュサンの蛹休眠を制御する遺伝子を同定するために、非休眠性のエリサンとの雑種後代を用いてポジショナルクローニングを行った。また、エリサンのゲノム情報整備を進めた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
昨年度の計画として、CRIS-PICh法によるノックインカイコの作出を計画していたが、CRISPR/Cas9システムの変異導入効率が低かったため、まずは変異導入効率を向上させることを目標とした。条件検討の結果、CRISPR/Cas9システムの変異導入効率が大幅に改善したため、今年度は改善した条件でCRIS-PITCh法を試みノックインカイコを作出する。 ノックアウトカイコの作出が遅延した一方で、系統樹立後に行う予定であった脳からのGFP陽性細胞の分取法を先に検討した。 また、平成30年度以降に行う予定であった蛹休眠制御遺伝子の同定を目指したシンジュサンとエリサンの雑種後代を用いたポジショナルクローニングを先行して行った。さらに、エリサンのゲノム情報整備を進めた。 常染色体上に存在する休眠制御遺伝子Lm-2のポジショナルクローニングは形質が分離しなかったため、飼育条件を再度検討する必要が生じた。
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Strategy for Future Research Activity |
胚休眠制御カスケードの全容を解明するために、下記の5つの課題に取り組む。 1. Lm制御下にある遺伝子をCETCh-seqで同定するために、CRIS-PITCh法を用いて、Lm遺伝子の上流に3×FLAGタグを導入したノックインカイコを作出する。変異導入効率が改善したCRISPR/Cas9システムを用いてノックインカイコを作出し、FLAG抗体を用いた免疫沈降が可能かどうかを検証する。 2. CRIS-PITCh法によりLm遺伝子の下流にEGFP遺伝子を導入したノックインカイコを作出する。また、対照としてLm遺伝子をEGFP遺伝子に置換することで機能破壊したカイコを作出する。Lmに制御される遺伝子を抽出する目的で、正常カイコとLmノックアウトカイコのLm発現部位におけるトランスクリプトームの比較を行うため、脳からGFP陽性細胞を分取する系を構築する。 3. 常染色体上に存在する新規休眠制御遺伝子Lm-2を同定するために、ポジショナルクローニングを行う。昨年度の実験においては、BC1個体の休眠性が分離せず、全個体が休眠性を示してしまった。今年度は飼育条件を再検討し、形質が分離する条件を見つけてポジショナルクローニングを行う。 4. pndおよびpnd-2遺伝子は、休眠ホルモンに曝された卵から発生する胚子が休眠に入るときに機能する遺伝子である。私たちはこれら遺伝子のノックアウトカイコを作出している。今年度は次世代シークエンサーにより得られたデータを用いて系統間の比較トランスクリプトーム解析を行い、各遺伝子に制御される遺伝子群を同定する。 5. 昨年度、ヤママユガ科であるシンジュサンの蛹休眠を制御する遺伝子を同定するために、非休眠性のエリサンとの雑種後代を用いてポジショナルクローニングを行った。今年度は候補遺伝子を絞り込むために、脳で発現する遺伝子の比較トランスクリプトーム解析を行う。
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