2017 Fiscal Year Annual Research Report
In vivoゲノム編集による肝疾患治療の実現を目指した脂質ナノ粒子の創生
Project/Area Number |
17H05052
|
Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
佐藤 悠介 北海道大学, 薬学研究院, 助教 (10735624)
|
Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
|
Keywords | ph感受性カチオン性脂質 / 安全治療域 / タンパク質送達 / RNP |
Outline of Annual Research Achievements |
高分子薬物の細胞質送達の要であるpH感受性カチオン性脂質の独自ライブラリを構築した。In vivo肝臓へのsiRNA送達活性を指標とし、多段階スクリーニングを行うことにより、既存技術と比較して6倍効率的な新規pH感受性カチオン性脂質CL4H6を見出した。CL4H6はその構造内にエステル結合を含み、siRNA送達後は速やかに分解することを明らかにした。この組織蓄積性を示さない性質は反復投与における安全性に貢献すると考えられた。そこで、50%有効投与量の400倍の高投与量で1か月間に亘って計8回静脈内投与を行った際の毒性を評価した結果、血液学的パラメータおよび肝・脾臓における組織学的所見の全ての評価項目において異常は認められなかった。以上の結果より、既存技術と比較して広い安全治療域を示す新規LNPの開発に成功した。本技術に関して国内特許出願を行った。 タンパク質中のリシン側鎖の第1級アミノ基に可逆的に共有結合し、電荷を負に反転させる無水マレイン酸誘導体(CDM)を用い、Cas9-gRNA複合体(RNP)と同等の分子量を有するIgGをモデルタンパク質としてそのLNPへの効率的な搭載法を検討した。IgGとCDMとの反応条件およびLNP製造時の諸条件の検討を行った結果、in vivo肝臓へsiRNAを効率的に送達可能な脂質組成および粒子径等の物性を維持した状態でIgGを細胞へ導入することが可能となった。また、CDMは中性条件下で速やかにIgGから脱離し、IgGの高次構造および抗原との親和性に影響がないことを確認した。また、培養細胞に核膜孔複合体に対するIgGを搭載したLNPを作用させたところ、IgGの核膜への集積が確認された。この結果はLNPによってIgGの活性を保持したまま効率的に細胞質へ送達されたことを示すものであり、RNP送達に有用であると考えられる。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
初年度における到達目標の1つである次世代pH感受性カチオン性脂質の同定による安全治療域の拡大に関して、開発に成功したCL4H6含有LNPはsiRNA送達活性として6倍向上し、安全性についても上述の生分解性の寄与により既存技術よりも大きく改善している。従って、申請時に掲げた5倍以上は十分に達成されており、目標を大きく超える成果が得られたと考えられる。 また、初年度において予定していたRNP搭載法の確立に関して、モデルタンパク質としてIgGを用いて諸条件の検討を行った結果、in vivo肝臓への薬物送達を達成する上で必要な物性(LNP表面の電荷、粒子径等)を保持した形でIgGを細胞質へ送達可能なことを確認した。また、CDMによるタンパク質の電荷反転・高次構造変化の可逆性を検討し、活性に影響がないことを確認した。以上より、RNP送達へ展開する上でのタンパク質搭載戦略のPOCの取得に成功した。加えて、次年度に行う予定であったin vitro遺伝子ノックアウト評価系の構築を行った。また、RNP搭載LNPの製剤処方および製造条件の最適化を行う上での変動要因の洗い出しを進めている。 以上より、当初の計画以上に進展していると考えられる。
|
Strategy for Future Research Activity |
簡便なGFPノックアウト評価系により、ノックアウト効率を指標としてRNP搭載LNPの製剤処方および製造条件における重要な因子の洗い出しを引き続き進める。GFPマウスを用いてin vivo肝臓における遺伝子ノックアウトを誘導可能な投与条件やLNPの製剤処方を同定する。本条件をベンチマークとし、肝実質細胞特異的遺伝子である第VII凝固因子(FVII)を標的遺伝子として安価・迅速・簡便なin vivo最適化を行う。in vitro系で見出した遺伝子ノックアウト活性に影響を与える重要因子について検討し、最適化を進める。実験計画法を取り入れることで各因子の寄与率や因子間の交互作用を明らかにし、効率的な最適条件の同定を行う。In silicoにて予測されるオフターゲット候補サイトにおける遺伝子ノックアウト効率をT7E1アッセイおよびディープシーケンス解析にて行う。
|