2019 Fiscal Year Annual Research Report
視床下部グルコース感受性神経における新たな調節因子と抗糖尿病薬の探索
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17H05059
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
戸田 知得 北海道大学, 獣医学研究院, 助教 (70571199)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 糖代謝 / 視床下部 / グルコース感受性神経 / 糖尿病 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、生活習慣病においてどのような分子が脳による血糖値の変化感知機能を低下し、糖尿病発症に関与するかを明らかにすると共に、その分子が糖尿病治療のターゲット分子となり得るかを明らかにすることである。2019年度は以下の研究成果を得た。
①通常マウスと肥満マウスにおいて、グルコースによって活性化される神経細胞(グルコース興奮性神経)のsingle cell RNA sequence行った結果、糖尿病を改善する効果がある分子Aを発見した(特許出願中)。②分子Aの作用メカニズムを解明するために様々な阻害剤を用いたところ、分子AはWntシグナルを介して抗糖尿病作用を示すことを明らかにした。③Wntシグナルは海馬の神経細胞においてシナプスの形態変化に関与することが知られている。従って、分子Aを投与したときのグルコース興奮性神経のシナプス数を測定したところ、分子Aがシナプスの数を増加させることを見出した。④分子Aによる抗糖尿病作用の分子メカニズムを解明するために、肥満マウスに分子Aを投与した後にグルコース興奮性神経を取り出しsingle cell RNA sequence行った。現在、遺伝子発現の変化を解析中である。⑤肥満による糖代謝悪化の分子Aとは異なるメカニズムを発見するために、視床下部のイメージング質量分析を行った。その結果、肥満モデルマウスの視床下部では通常マウスよりもアラキドン酸を含有する細胞膜リン脂質が低下し、プロスタグランジン類の生成が増加した。リン脂質からアラキドン酸を遊離するホスホリパーゼA2の発現をshRNAによって低下させると糖代謝が改善した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画通り糖尿病治療のターゲットとなり得る分子Aを見つけることができ、北海道大学によって特許出願がなされた。現在は分子Aの抗糖尿病作用メカニズムを解明しているところである。そのメカニズムの1つとして、Wntシグナルが重要であることを発見し、シナプスの数を変化させていることも見出した。現在、論文を作成中であり、2020年度中の科学雑誌掲載を目指している。 また、分子Aとは異なるメカニズムを発見するために、視床下部のイメージング質量分析を行い、プロスタグランジン類および脳内炎症がグルコース感受性神経の機能減弱に関与することを見出した。この成果はすでに論文として投稿し、現在はRevisionの最中である。 このように本研究は肥満による糖代謝悪化のメカニズムの一部を解明し、糖尿病治療のターゲット分子を見つけることが出来た。従って、順調に研究が進んでいると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
分子Aの作用メカニズムとして、すでに①シナプスの数を増加すること、②Wntシグナルを介すること、③遺伝子発現を変化させること、などの知見を得ているが、今後はこれらのメカニズムをさらに詳細に解明する。具体的には、①2光子レーザー顕微鏡を用いて、活動中のマウスにおけるグルコース感受性神経のシナプス形態変化を経時的に撮影し、分子Aの投与や血糖値の変化と関係があるかを調べる。②Wntシグナルの阻害剤が分子Aによるシナプス数の増加を抑制するかを確かめる。③gene ontology解析によって分子Aが抗糖尿病作用を示すために重要な遺伝子群を見つけ出す。④分子Aと類似した機能を持つ化合物を肥満マウスに投与し、糖尿病を改善するかを検証する。
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Research Products
(8 results)