2018 Fiscal Year Annual Research Report
Analysis of synaptic insulin signaling in the hippocampus and prefrontal cortex in diabetes-associated cognitive impairment.
Project/Area Number |
17H05062
|
Research Institution | National Center for Geriatrics and Gerontology |
Principal Investigator |
多田 敬典 国立研究開発法人国立長寿医療研究センター, 統合加齢神経科学研究部 神経内分泌学研究室, 室長 (20464993)
|
Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
|
Keywords | シナプス可塑性 / 糖代謝シグナル / 認知機能 |
Outline of Annual Research Achievements |
認知機能障害は、Pre-Clinical、MCI(Mild Cognitive Impairment)を経て、認知症・アルツハイマー病に至ると考えられている。また認知機能障害の初期脳内ではシナプス機能低下、アミロイド沈着などが見られ、後期には海馬の萎縮が認められるなど、進行的な脳内変化が生じることが知られている。このような認知機能障害機構の進行過程を加速する危険因子の一つとして、糖尿病が近年の大規模疫学研究により示唆されている。しかしながら、糖尿病による生体内での糖代謝異常がどのように脳中枢神経系に作用し、認知機能障害を誘導するのか詳細な分子メカニズムは不明である。これまでに糖代謝異常を示す高脂肪食負荷動物が、海馬・前頭葉依存的な認知学習機能障害を呈することを示唆してきた。本研究では認知学習構築の際に必要とされる海馬・前頭葉神経細胞シナプス部位での機能的タンパク質の可塑的変化に対し、糖代謝シグナルの制御破綻がどのように影響するか検討を試みる。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
高脂肪食負荷マウスの糖代謝シグナルを介したシナプス機能について解析を試みた。in vitroの系において正常マウス海馬スライスに認知学習様刺激(chemical LTP)を加えたところ、AMPA型グルタミン酸受容体のサブユニットの一つGluA1のリン酸化および糖代謝シグナル下流経路であるAKTシグナルのリン酸化の促進が見られたのに対して、高脂肪食負荷マウス海馬スライスを用いた解析ではcLTPによるGluA1,AKTリン酸化亢進が抑制されていた。これらの結果より、学習刺激依存的に糖代謝シグナルが可塑的変化を生じることと、糖代謝異常により同経路のシナプスでの可塑的変化が破綻することを示唆した。今後はin vivoの系として受動回避テストによる認知学習後の生体マウスを用いた同様の解析を行うことで、認知学習行動と糖代謝シグナルのシナプス可塑的変化との因果関係を明らかにすることを試みる。 しかしながら、実験を計画していた電気生理学的解析およびゴルジ染色法によるシナプス形態観察については、条件検討中であり、当初の研究計画よりやや遅れている。
|
Strategy for Future Research Activity |
認知学習に伴う脳内糖代謝シグナル活性の質的変化解析 (a)認知学習刺激による脳内糖代謝シグナル活性解析とシナプス可塑性解析 認知学習刺激が脳内糖代謝シグナル活性に与える影響を調べる。受動回避テストによる認知学習に伴うマウス海馬・前頭葉での脳内糖代謝シグナル活性を解析する(認知学習刺激後1, 3, 6, 24時間の海馬・前頭葉を回収)。近年、インスリン受容体が学習刺激に伴いシナプス部位に集積することが報告されており、シナプス部位を含む海馬・前頭葉神経細胞分画での糖代謝シグナルについても活性変化を検討する。認知学習後には、シナプス部位に可塑的変化(シナプス応答性の上昇、AMPA型グルタミン酸受容体の膜表面移行の増加、マッシュルーム型成熟スパインの増加)が生じ、シナプス機能が向上することをすでに見出しており、シナプス機能と海馬・前頭葉糖代謝シグナル活性変化との相関性を解析することにより、認知学習に伴うシナプス可塑性と海馬・前頭葉糖代謝シグナルとの関係性が明らかとなる。 (b)高脂肪食負荷マウスでの認知学習刺激による海馬・前頭葉糖代謝シグナル活性解析とシナプス可塑性解析 認知学習後の野性型と高脂肪食負荷マウスの海馬・前頭葉糖代謝シグナル活性を比較検討する。高脂肪食負荷マウスでは定常時の糖代謝シグナル活性が高いため、認知学習に伴う海馬・前頭葉糖代謝シグナルの活性変化率が低くなると予想される。また上記(a)同様シナプス機能との相関性を解析することにより、糖代謝異常に伴う認知機能障害と脳内糖代謝シグナル活性変動とのシナプス部位における機能的な因果関係が明らかとなる。
|
Research Products
(5 results)