2019 Fiscal Year Annual Research Report
Analysis of synaptic insulin signaling in the hippocampus and prefrontal cortex in diabetes-associated cognitive impairment.
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17H05062
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Research Institution | National Center for Geriatrics and Gerontology |
Principal Investigator |
多田 敬典 国立研究開発法人国立長寿医療研究センター, 統合加齢神経科学研究部, 神経内分泌学研究室長 (20464993)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 糖代謝シグナル / 加齢 / シナプス / 認知症中核症状 / 認知症周辺症状 |
Outline of Annual Research Achievements |
認知症の病態進行過程において、神経細胞シナプスの機能低下は脳萎縮に至る前に生じる初期の脳内変化として着目されている(Jack et al., Lancet Neurol., 2013)。近年の大規模疫学研究により、認知症の進行過程を左右する危険因子群が重要視されている(Livingston et al., The Lancet Commissions, 2017)。加齢やそれに伴う糖代謝異常をはじめとした末梢組織を起点する生体恒常性の破綻は認知症の最大のリスク要因であり、そのシナプス機能との関係性に多くの関心が寄せられている。しかしながら加齢や糖代謝異常がどのように脳中枢神経系に作用し、認知機能障害を誘導するのか詳細な分子メカニズムは不明である。これまでに加齢および糖代謝異常を示すモデル動物において、認知症中核様症状・周辺様症状が見られることを示唆してきた。 本研究では中核様症状・周辺様症状の際に必要とされる海馬・前頭葉神経細胞シナプス部位での機能的タンパク質の可塑的変化に対し、糖代謝シグナルの制御破綻がどのように影響するか検討を試みる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
高脂肪食負荷マウスにおける認知機能障害に加え、糖代謝機能に変化の見られる加齢動物において認知症様症状行動(記憶障害などの中核症状、過剰攻撃行動などの周辺症状)の検討を行った。加齢動物の認知記憶評価には、Y字型迷路課題を用いた。Y字型迷路課題では、マウスが探索行動時に自発的に異なるアームに入る性質を利用した交替反応を測定することで、空間作業記憶の指標として評価した。加齢動物では、若齢期のマウスと比較してアームへの侵入回数のみならず、アーム侵入正答率の低下が確認された。また同様に加齢動物の攻撃行動評価として、他個体との接触を必要としない対物攻撃行動測定装置(ARM; Aggression Response Meter)を用いた。ARMは刺激棒を動物の眼前で動かし、刺激棒に対して噛む、引っ張ることにより加えられた力の強度と方向を加重センサーによって検出し、対物攻撃行動を評価する。加齢動物は若齢動物に比べて易怒性に攻撃行動が上昇することを見出した。 現在、認知機能・攻撃行動発現担当脳部位である海馬と内側前頭前野(mPFC; medial prefrontal cortex)での糖代謝シグナル活性変化、シナプス可塑性、シナプス貪食ミクログリア活性について相関的解析を行い、糖代謝異常・加齢による包括的なシナプス機能変化を介した認知症様症状重篤化メカニズムの解明を試みている。
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Strategy for Future Research Activity |
加齢および糖代謝異常に随伴する認知症中核様症状・周辺様症状における糖代謝シグナルを介したシナプスリモデリングの解析 ①加齢および糖代謝異常動物の海馬、mPFC神経可塑性検討 (a)急性脳スライスを作製し海馬、mPFC興奮性神経細胞でのAMPA/NMDA比解析によるグルタミン酸受容体シナプス応答の電気生理学的解析を行う。またゴルジ染色により海馬、mPFC神経細胞スパインの成熟度タイプをStubby/ Mushroom-shaped/ Thinと形態別に分類し、タイプ別のスパイン数を測定することで、シナプスリモデリング活性を評価する。(b)神経可塑性機構に関与する因子の活性解析を行う。シナプトニューロソーム分画におけるリン酸化AMPA型グルタミン酸受容体の(GluA1;ser831,ser845)、リン酸化Cofilin(ser3)、リン酸化CamKⅡ(Thr286)をウェスタンブロット法により評価する。 ②加齢および糖代謝異常動物の海馬、mPFCミクログリア活性を介したシナプス貪食機能評価 (a)海馬、mPFC領域でのIba1、P2Y12受容体、Cx3cr1等の発現を指標に脳内ミクログリア活性を解析し、ミクログリア貪食能力について検討する。また活性化ミクログリアをM1型(神経障害性)とM2型(神経保護性)に分類し比較検討することで、活性型転換と病態進行の関係性解明を試みる。(b)海馬、mPFC神経細胞特異的にGFPタンパク質をレンチウィルスの系を用いて導入し、シナプスの可視化を試みる。Iba1染色と組み合わせ、Iba1陽性細胞中に封入されたGFP陽性率を測定することで、ミクログリアのシナプス貪食能について評価する。また残存するスパイン数をスパイン形態ごとに分類して計測することで、ミクログリアのシナプス貪食選択性およびリモデリングについて検討する。
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Research Products
(6 results)