2017 Fiscal Year Annual Research Report
代謝リプログラミングによるB細胞の分化運命決定機構の解明
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17H05072
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Research Institution | Tokyo University of Science |
Principal Investigator |
羽生田 圭 東京理科大学, 研究推進機構生命医科学研究所, 助教 (40734918)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 胚中心 / プラズマ細胞 / 抗体産生 / 免疫記憶 / 細胞内代謝 / 分化制御 |
Outline of Annual Research Achievements |
抗原を認識して活性化したB細胞は、抗体を産生するプラズマ細胞や、高親和性メモリーB細胞の前駆体である胚中心(GC)B細胞へと分化する。これらは、細菌やウイルス感染防御において重要な役割を果たす。しかし、どのような要因が活性化B細胞の分化方向を決定するのかは未だ不明瞭である。本研究では、代謝リプログラミングがB細胞の分化運命を決定するという仮説のもと、誘導性GC B(iGB)細胞培養系を駆使してB細胞の代謝リプログラミング機構を詳細に解析し、活性化B細胞の分化運命決定機構の解明を目指した。 当該年度では、胚中心形成に必須のシグナル経路である、CD19-Akt経路によって制御される代謝リプログラミング機構に焦点を当てて解析を進め、以下の結果を得た。 1)CD19欠損B細胞はGL7+CD38+のプレGC B細胞までは正常に分化するが、プレGC B細胞におけるBCL6発現誘導に異常があり、GC B細胞への移行に障害がある。2)CD19欠損のプレGC B細胞では、AMP活性化プロテインキナーゼ(AMPK)のリン酸化が亢進、ミトコンドリア活性酸素産生の亢進、および解糖系最終代謝産物である乳酸の産生低下がみられた。3)CD19欠損のiGB細胞においても、ミトコンドリア活性酸素産生の亢進、および乳酸の産生低下が認められ、これらは、恒常活性型Aktの導入またはAMPKのノックダウンにより回復した。また、CD19欠損iGB細胞への恒常活性型Aktの導入またはAMPKのノックダウンはBCL6発現を一部回復した。4)解糖系酵素の阻害剤およびミトコンドリア電子伝達系の阻害剤はiGB細胞におけるBCL6発現を強力に抑制した。また、免疫したマウスにこれらの阻害剤を投与した際にはGC B細胞数が減少した。 以上の結果から、CD19-Akt経路は、AMPKシグナルと解糖系およびミトコンドリア代謝を制御し、BCL6発現を誘導してGC B細胞分化を進める可能性が明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初の計画に従って研究を進め、細胞内代謝がB細胞分化に影響する可能性が徐々に明らかになってきたが、GC B細胞とプラズマ細胞へのそれぞれの分化を決定するための具体的な代謝改変機構を明らかにするまでに至っていない。
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Strategy for Future Research Activity |
BCL6誘導機構の詳細を明らかにするために、同位体標識したグルコース等を細胞内に取り込ませてCD19欠損B細胞の代謝経路異常を同定する。また、プラズマ細胞分化に必要な代謝リプログラミング機構を同定するために、BCR刺激を行ったiGB細胞の代謝機構を詳細に解析する。
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