2018 Fiscal Year Annual Research Report
Regulatory mechanism of gastric differentiation from gastric stem cells
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17H05081
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
早河 翼 東京大学, 医学部附属病院, 助教 (60777655)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 胃上皮幹細胞 / 分化 / 腸上皮化生 / 胃癌 / アセチルコリン |
Outline of Annual Research Achievements |
胃上皮幹細胞の分化および腸上皮化生の発生機序について、マウスモデルを用いた検討を継続した。腸上皮化生の起源細胞として胃内の主細胞が関与していると報告されている。主細胞は幹細胞マーカーLgr5を発現しているため、Lgr5-DTRマウスを用いて主細胞を特異的にアブレーションした状態で腸上皮化生を惹起したところ、主細胞の有無に関わらず腸上皮化生は発生した。このことから、少なくとも主細胞は腸上皮化生の発生には必須ではなく、幹細胞・前駆細胞から発生しうると考えられる。腸上皮化生の発生過程においてDclk1陽性Tuft細胞が異常に増生することが知られている。Tuft細胞を選択的にアブレーションできるDclk1-DTRマウスを用いて、Tuft細胞を除去した状態で腸上皮化生を惹起したところ、腸上皮化生および細胞増殖が著明に抑制された。Dclk1-DTアブレーションに加えてアセチルコリンアゴニストを投与したところ、阻害されていた細胞増殖が回復したことから、Tuft細胞からのアセチルコリンが重要であると考えられた。アセチルコリン受容体は正常状態では胃壁細胞に発現しているが、腸上皮化生発生過程においては幹細胞・前駆細胞に発現が誘導され、下流のMAPK・CREB・Akt経路を活性化させて細胞増殖を制御していることがわかった。また、幹細胞、主細胞、壁細胞をそれぞれ選択的にFACSで抽出して遺伝子発現解析を施行したところ、幹細胞にはWnt/Rspondin経路に重要なLgr4・Fzd5などのマーカーが高発現し、一方主細胞にはLgr5の他、独特の遺伝子発現パターンが認められた。これらの情報をもとに、幹細胞・主細胞を特異的に標識できる新規の遺伝子改変マウスを作成した。また、Lgr4・Fzd5のノックアウトマウスを入手し、正常状態および腸上皮化生発生状態におけるこれら遺伝子群の機能解析を行なっている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
幹細胞およびその他の細胞群の遺伝子解析を施行し、それぞれ選択的に標識しうる遺伝子改変マウスを作成することができた。また、特異的アブレーションモデルを用いることで、幹細胞の制御機構としてTuft細胞からのアセチルコリンを介したシグナル伝達経路を同定することができ、また腸上皮化生の起源細胞に関する検討も行なった。今後の研究に向けて複数の遺伝子改変マウスを入手済みであり、交配をすすめることができている。研究成果は複数の国際学会誌に掲載され、順調に計画が進展していると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
新規に作成した遺伝子改変マウスと条件的ノックアウトマウスを交配し、幹細胞の分化と腸上皮化生の発生の制御機構の解析をすすめていく。新規遺伝子改変マウスは特定細胞群を選択的に抽出できるよう蛍光レポーターが組み込まれており、FACSで抽出してシングルセル解析へ回したいと考えている。腸上皮化生のみならず発癌に到るまでの過程についても検討を行なっていく。
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