2018 Fiscal Year Annual Research Report
炎症抑制能をもつ新規腸管上皮内細胞の遺伝子制御の解明
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17H05082
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
筋野 智久 慶應義塾大学, 医学部(信濃町), 特任講師 (40464862)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 炎症性腸疾患 |
Outline of Annual Research Achievements |
炎症性腸疾患(潰瘍性大腸炎、クローン病)は慢性消化管炎症をきたす疾患であり、本邦を含むアジア諸国でも増加の一途を辿っている。炎症性腸疾患の発症原因は未だ不明であるが、腸管粘膜に存在する免疫細胞、特にT細胞の過剰な活性化が疾患の引き金になっていると考えられている。腸管粘膜には炎症惹起に関わるhelper T細胞と炎症抑制に関わる制御性T細胞が存在しており、これら相反する性質を有するT細胞のバランスが腸管免疫の恒常性に重要である。近年、申請者らは腸管上皮間に存在し、炎症抑制的に働くCD4+CD8αα+陽性T(CD4CD8 double positive IEL: DPIEL)細胞を同定した(Sujino T et al. Science 2016)。炎症性腸疾患患者、セリアック病においてDPIELの減少が報告され、特定の腸内細菌の関与も2017年にScienceで報告されており疾患との関連性が注目されている。さらにDPIELが炎症抑制性、組織修復に必要な細胞の可能性が報告されおり、腸管内におけるDPIELの分化機構解明は重要な課題である。 これまでにDPIELの分化誘導における遺伝子機構としてCD4マスター遺伝子であるThpokの減弱、CD8マスター遺伝子であるRunx3の増加が寄与することは判明しているが、そのほかの遺伝子関連因子については不明である。さらにDPIELがなぜ上皮内にのみ存在するのかについても不明な点が多い。そこでDPIELの上皮内という局在を中心に、ホーミングレセプターと、新規誘導に必須の遺伝子の抽出を検討する。またヒトにおいてDPIELが存在するか、存在する局在を含め検討する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
マウスにおいてDPIELは腸管のホーミングレセプターが陰性化しており、腸管粘膜固有層にホーミングののちにホーミングレセプター近傍のエンハンサー領域において何らかのクロマチン修飾がかかる可能性が示唆された。またDPIEL細胞のRNA-seqにより候補遺伝子を抽出し、特定の候補遺伝子におけるKOマウスではDPIEL細胞は有意に減少し、一方で特定の遺伝子をCD4特異的に増加させたトランスジェニックマウスにおいてはDPIEL細胞は増加することを見出した。今後、同方法で見出した特定の遺伝子がDPIEL細胞とのinteractionを検討するためchip-seqを行い検討する。とくにホーミングレセプターにおけるエンハンサー領域に候補遺伝子とのinteractionがあるかを検討する。 さらにヒト腸管においてはDPIEL細胞は腸管上皮、大腸粘膜固有層にともに同程度存在し、炎症性超疾患患者においては有意に減少することを見出した。今後ヒト腸管においてマウスとの相同性を検討することで炎症性腸疾患制御におけるDPIELの役割について検討する。
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Strategy for Future Research Activity |
ヒト炎症性腸疾患、ヒト健常検体を使用し、同細胞のRNA-seqを検討する。すでに倫理委員会にヒト腸管検体の取得については認可されている。また、マウスにおいては特定の遺伝子がBindする領域を特定するためChip-seqを行い、ターゲット遺伝子を同定する。マウスでのDPIEL遺伝子発現と、ヒト腸管内におけるDPIELにおいて遺伝子発現の相同性を検証し関連性を追求する。さらに腸管内において特定の候補遺伝子が上昇するメカニズムを追求する。
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Research Products
(2 results)