2018 Fiscal Year Annual Research Report
標的アイソトープ治療に資する局所線量分布精密イメージング技術の開発
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17H05093
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Research Institution | National Institutes for Quantum and Radiological Science and Technology |
Principal Investigator |
小平 聡 国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構, 放射線医学総合研究所 計測・線量評価部, 主幹研究員(定常) (00434324)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 標的アイソトープ治療 / アスタチン / 固体飛跡検出器 / マイクロドシメトリ / アルファ線 / オージェ電子 |
Outline of Annual Research Achievements |
アルファ線やオージェ電子等の高LET(線エネルギー付与)粒子を放出する放射性核種を活用した標的アイソトープ治療は、腫瘍部への線量付与が非常に大きくかつ正常組織への影響を低減できることから、有望な手法として注目されている。本研究では、がん細胞へ取り込まれ放出されるアルファ線一つ一つを検出し、その分布をイメージングすることで、局所線量分布イメージんが可能な計測技術の開発を目的としている。 アルファ線放出核種であるアスタチン211(211-At)を結合させた抗体薬(トラツヅマブ)1MBqを、ヒト胃がん細胞を肝臓に転移させたモデルマウスへ静脈導入し、12時間後に肝組織の凍結切片を作製した。凍結切片に含まれる211-Atから放出されるα線をCR-39固体飛跡検出器へ31時間照射した。正常組織に対するがん組織のアルファ線飛跡のフルエンス比は6.0 +/- 0.2であり、6倍の線量集中性を確認した。アルファ線トラックのLETピーク値は130 keV/umであり、10um角ビン毎のLETとフルエンスとの積算から求められる吸収線量分布を求めた。CR-39への照射時間内で観測されたアルファ線トラック数をもとに211-Atの半減期を考慮すると、静脈注射から43時間(約6半減期)までに付与される吸収線量は2 Gyにピーク値を持ち最大線量は7 Gy程度に及ぶことが分かった。アルファ線の生物学的効果を考慮すれば、実際の付与線量は2~3倍大きくなる。 イオン飛跡を蛍光トラックとして読みだすことができる蛍光飛跡検出器の適用についても検討を進めた。特に、酸化アルミニウム単結晶を用いた素子を用いて、111-Inならびに64-Cuから放出されるオージェ電子やベータ線のイメージングを試みた。素子深さ方向の線量分布を得ることに成功し、60-Coガンマ線等価線量で校正することで線量絶対値を評価できることを確認した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
動物試料を用いたがん組織中のアルファ線放出分布を定量評価する系を確立することができた。この成果は、核医学研究分野の著名雑誌(Journal of Nuclear Medicine)に掲載された。また、蛍光飛跡検出器を用いたオージェ電子計測に関する基礎検討を進めることができ、オージェ電子を含めた線量の定量評価が可能になりつつある。この検出器は、更に発展させることでその場観測によるタイムラプスができるので、ライブセルを用いた実験によりアルファ線やオージェ電子等の生物学的効果を評価することが近い将来可能になると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
CR-39固体飛跡検出器を用いた組織切片から放出されるアルファ線計測技術を応用し、マウス動態に対する線量評価を進めることで、治療効果を決める物理パラメータとして活用する。また、イオン飛跡をイメージングできる蛍光飛跡検出器(酸化アルミニウム単結晶や銀活性リン酸塩ガラス)の特性・性能評価を進め、オージェ電子やベータ線等の局所的な線量評価法の確立を進めるとともに、将来のライブセルイメージングに向けた実験系の確立を目指す。
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