2017 Fiscal Year Annual Research Report
肺炎球菌の進化過程で保存された病原因子の検索とワクチン抗原の開発
Project/Area Number |
17H05103
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
山口 雅也 大阪大学, 歯学研究科, 助教 (00714536)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 肺炎球菌 / 細菌 / 感染症 / 分子進化 / ワクチン |
Outline of Annual Research Achievements |
肺炎球菌のコリン結合タンパク質(Cbp)は、コリン結合リピートを介して細胞壁に含まれるコリンと結合し、菌体表層に局在する。本研究では、分子進化解析により、Cbpの肺炎球菌種における重要性を評価するとともに、機能解析を行った。 全ゲノムが解読された肺炎球菌28株について、16種類のCbpについて分子進化解析を行ったところ、肺炎球菌種内で、cbpJ遺伝子がもっとも進化上の変異が制限されていることが示唆された。一方で、cbpL遺伝子は進化的に保存されている領域が存在しなかった。また、cbpJは28株中17株、cbpLは28株全てにオルソログとなる遺伝子が存在した。cbpLに関して、2株にフレームシフト変異が存在した。次に、各菌株とヒト好中球をそれぞれMOIが0.05となるように混和し、培養1、2、3時間後の菌体生存率を比較した。培養1、2、3時間後の全てにおいて、cbpJ 欠失株およびcbpL 欠失株は、野生株と比較して有意に低い生存率を示した。肺炎モデルとして、各菌株をマウスに経鼻感染させ、感染後14日間の生存率を比較したところ、cbpJ 欠失株感染マウスは、野生株感染マウスと比較して有意に高い生存率を示した。また、感染24時間後の肺胞洗浄液中の菌数において、cbpJ 欠失株感染マウスは、野性株感染マウスと比較して有意に減少した。さらに、感染24時間後のHE染色による肺組織像を観察したところ、野生株感染マウスでは著しい炎症性細胞の浸潤や出血などの高度な炎症像を認めた。また、cbpL欠失株感染マウスでは野生株感染マウスと比較し顕著な差は認められなかった。一方で、cbpJ 欠失株感染マウスの肺組織像は、野生株感染マウスと比較して軽度な炎症像を示した。 以上の結果から、CbpJは肺炎球菌の肺炎発症において、好中球の殺菌の回避に寄与することで病原因子として働くことが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画通り、肺炎球菌の菌体表層タンパク質群について分子進化解析を行い、肺炎球菌の種内で変異が制限されている分子を選出した。また、選出した分子がマウス感染モデル、細胞感染モデルの両者で病原性に寄与することを示唆する結果が得られた。これらの結果から、当初の予定通り研究が進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
基本的に、当初の研究計画に沿って実験を行う。一方で、当初の計画で外部企業に解析の委託を行うものについて、科研費またはAMEDによる研究支援プログラムが存在するもの(遺伝子解析など)については積極的な応募を行い、より合理的かつ質の高い計画の遂行を目指す。
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[Journal Article] Neutrophil elastase subverts the immune response by cleaving Toll-like receptors and cytokines in pneumococcal pneumonia.2018
Author(s)
Domon Hisanori, Nagai Kosuke, Maekawa Tomoki, Oda Masataka, Yonezawa Daisuke, Takeda Wataru, Hiyoshi Takumi, Tamura Hikaru, Yamaguchi Masaya, Kawabata Shigetada, Terao Yutaka
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Journal Title
Front. Immunol.
Volume: in press
Pages: -
Peer Reviewed / Open Access
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