2017 Fiscal Year Annual Research Report
Creation and Development of Nanoscale Laboratory
Project/Area Number |
17H06119
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
村田 靖次郎 京都大学, 化学研究所, 教授 (40314273)
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Project Period (FY) |
2017-05-31 – 2022-03-31
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Keywords | 開口フラーレン / 水単分子 / 水素結合 / 緩和時間 / X線結晶構造解析 |
Outline of Annual Research Achievements |
水素結合に誘起された水分子の動きに関する研究は非常に重要であり,水一分子が関与した水素結合について理論的な研究が盛んに行われてきた.しかし,外的環境と複雑な水素結合ネットワークを構築するため,実験的な研究例は極めて少ない.本研究では,開口部上の水素結合ネットワークと単一水分子との間の相互作用を検証した. 水内包開口フラーレンC60に対して,CeCl3存在下,10 equivのNaBH4を反応させることで,3つのカルボニル基が選択的に還元された還元体が75%の収率で得られた. 単結晶X線構造解析の結果,この化合物は開口部上に強固な分子内水素結合を形成し,分子間水素結合を介してダイマー化することがわかった.さらに,骨格内部では中心部と開口部付近において内包水分子のディスオーダーが見られ,占有率はそれぞれ0.11(2), 0.81(2)であった.これは,分子内水素結合により内包水分子が並進運動していることを示唆している. ダイマー化が抑制される希薄条件 (0.9 mM, o-ジクロロベンゼン) での1H NMR 測定の結果,低温において内包水分子のシグナルが低磁場シフトすることがわかった.これは,内包水分子と開口部上のOH基との間の水素結合形成を示唆する結果である.さらに,内包水分子の1H NMR 緩和時間測定から内包水分子の回転運動が著しく抑制されていることがわかった.また,この化合物のCDCl3溶液にD2Oを添加したところ,開口部上の全てのOH基が重水素化された化合物へと変換された.興味深いことに,D2O添加後48時間が経過しても内包水分子と開口部上のOD基との間のH-D交換は観測されなかった.これらの結果は,内部に内包された水分子がCDCl3中に溶解している水分子に比べて,塩基性・酸性が低いことを示している.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
開口部へのストッパー構築反応実験の結果、当初の予想に反し、三つのヒドロキシ基が互いの位置関係に影響して新しいストッパー構造を形成することが明らかとなった。研究遂行上、この影響を排除することが不可欠であることから、新しいストッパー構造の解析を行い、同構造の最適化を追加で実施することにより、水素結合ネットワークと水単分子との相互作用を明らかにすることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
当初の研究計画に従って、フラーレンへの開口部構築、小分子の内部への挿入、開口部の修復を検討することによって、ナノフラスコを実現し、孤立化学種の性質を明らかにする。
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Research Products
(11 results)