2018 Fiscal Year Annual Research Report
Creation and Development of Nanoscale Laboratory
Project/Area Number |
17H06119
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
村田 靖次郎 京都大学, 化学研究所, 教授 (40314273)
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Project Period (FY) |
2017-05-31 – 2022-03-31
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Keywords | 開口フラーレン / 一酸化窒素 / 内包 / 分子錯体 / 1H NMR / ESR / 単結晶X線構造解析 |
Outline of Annual Research Achievements |
電子スピン系は分子磁性や医療・量子デバイスなどの広い分野から注目を集めている。従来の電子スピン系は主に毒性をもつ金属に依存しており、軽元素のみから構成される物質設計が求められている。本研究では、開口C60 誘導体の内部に常磁性をもつ一酸化窒素分子を導入することを試みた。まず、開口 C60 誘導体を C60 から4段階で合成した。粉末状のこの化合物に、高圧 NO ガス (28 atm) を接触させた後、すぐに2等量の BH-THF を作用させることで、開口部上のカルボニル基の1つを OH 基へと還元した。その結果、67%の収率で一酸化窒素内包体が得られた。この分子錯体は Buckyprep カラムによって、他の内包体と分離することが可能であり、内包率を95%まで高めることができた。興味深いことに、この分子錯体は常磁性分子であるにもかかわらず、シャープな 1H NMR シグナルを示すことがわかった。また、NO 分子を内包したことによって、1H NMR において化学シフトの温度依存性が観測され、測定温度の降下にともなって高磁場側へシフトすることがわかった。解析の結果、擬コンタクトシフトと Fermi コンタクトシフトの両方が常磁性化学シフトに寄与していることがわかった。一般的に、NO 分子は分子本来がもつ軌道角運動量の影響で、ゼオライトやアルゴンマトリックス中など対称性が崩れる環境下においてのみ ESR シグナルが観測される。粉末状の分子錯体の ESR 測定の結果、40 K 以下の極低温下においてブロードニングしたシグナルが観測された。これは、NO 分子が C1 対称の炭素骨格に内包されたことに起因すると考えられる。すなわち、本電子スピン系は、結晶性・溶解性に優れ、従来の常磁性分子では考えられない ESR・NMR の両方に活性をもつ分子であることがわかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
開口部をフラーレン誘導体内部に常磁性である一酸化窒素分子を挿入することによって、1分子が外界から隔離された状態を作り出すことができた。これは、当にナノフラスコの実現であり、研究はおおむね順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
当初の研究計画に従って、フラーレンへの開口部構築、小分子の内部への挿入、開口部の修復を検討することによって、ナノフラスコを実現し、孤立化学種の性質を明らかにする。また、開口部の変換反応を基軸として、新しいナノカーボンを合成し、その内部空間の利用を図る。
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Research Products
(17 results)