2019 Fiscal Year Annual Research Report
Creation and Development of Nanoscale Laboratory
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17H06119
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
村田 靖次郎 京都大学, 化学研究所, 教授 (40314273)
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Project Period (FY) |
2017-05-31 – 2022-03-31
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Keywords | 開口フラーレン / ビス付加体 / 単結晶X線構造解析 / ピリダジン |
Outline of Annual Research Achievements |
開口部をもつフラーレンC60誘導体は分子内包フラーレンやヘテロフラーレンの前駆体として極めて重要であり、精力的に研究されてきた。一方、2つの開口部をもつC60誘導体は開口位置に由来した特異な電子物性・構造特性が期待されるが、これまでに開口部が極めて小さいものについて2例報告されているのみであり、効率的な合成法は確立されていない。そこで本研究では、C60とピリダジン誘導体との熱反応により簡便に得られる2つの開口部をもつ異性体混合物から単一の誘導体を分離する手法を確立し、その構造決定および位置選択性について検討した。 まず、C60とピリダジン誘導体の熱反応により,モノ付加体と2つの開口部をもつビス付加体を合成した。1H NMR解析の結果、ビス付加体は約12種類の構造異性体混合物であることがわかった。引き続き、酸素存在下、光照射することにより、開口部上の二重結合が開裂したと考えられる異性体混合物へと導いた。二重結合の開裂パターンに応じて、ビス付加体は40種類程度の異性体を含むものと予想された。しかし、実際には1種類のビス付加体が29%という圧倒的な比率で生成していることがわかった。そこで、この化合物をシリカゲルカラムとHPLC精製により単離した。13C NMR測定の結果、ほぼ全てのシグナルが分離して観測されたことから、この化合物はC1対称性をもつことがわかった。さらに、単結晶X線構造解析を行なった結果、このビス付加体は、2つの開口部を介して内部が貫通した樽型構造をもつことがわかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度の研究では、実験研究において新しい知見の発見があったため、次年度へ一部の資金を繰り越し、研究を継続させた。その年度において、コロナウィルスの影響があり、実験に必要な試薬や器具の調達が遅れたため、実験は若干遅れたものの、その間に大型計算機を用いた理論計算研究を進めることが可能であり、結果、おおむね順調に進展させることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
当初の研究計画に従い、引き続きフラーレン骨格の骨格変換反応の開発を進め、分子内部への小分子や活性化学種の挿入を行う。また、内包種を保ったままでの開口部の閉環や、2種類の化学種の内包を検討する。さらに、得られた化合物の固体物性を明らかにする。
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Research Products
(15 results)