2020 Fiscal Year Annual Research Report
Creation and Development of Nanoscale Laboratory
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17H06119
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
村田 靖次郎 京都大学, 化学研究所, 教授 (40314273)
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Project Period (FY) |
2017-05-31 – 2022-03-31
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Keywords | 拡張フラーレン / 開口フラーレン / トリアジン / N-フェニルマレイミド / 単結晶構造解析 / フラーレン |
Outline of Annual Research Achievements |
フラーレンは主に炭素棒のアーク放電やベンゼン等の不完全燃焼といった過酷な条件下で生成し、C60やC70が主に生成し、C76以上の高次フラーレンの収率は極めて低いことが知られている。温和な条件下で既存のフラーレン骨格を自在に拡張する手法が開発できれば、高次フラーレンを大量合成する経路に発展できる可能性を有しており、またその過程において、拡張したフラーレン骨格にヘテロ原子を埋め込むことが出来れば、本来sp2混成の炭素のみで構成されるフラーレンに新たな機能を付与することが出来るものと期待できる。しかし、そのような例はほとんど報告されておらず、新しい手法の開発が待ち望まれていた。 本研究では、C60を原料としてC65NまたはC64N骨格へと拡張する手法を開発した。すなわち、まずピリジル基を有する1,2,4-トリアジン誘導体とフラーレンC60との熱反応により、8員環の開口部を有するフラーレンを合成した。これにN-フェニルマレイミドを反応させることによって脱有機官能基化によるC60の再生を試みたところ、そのような反応はほとんど進行せず、全く新しい化合物が高収率で生成することが明らかとなった。この化合物の構造は単結晶X線構造解析によって決定され、C60骨格にC5Nユニットが埋め込まれ、5員環と2つの7員環が新たに形成されていることを明らかにした。また、この化合物を酸で処理すると、骨格炭素が外部に放出された構造をもつC64Nへと構造が変化することが明らかとなった。さらにこのフラーレン骨格の拡張法がC70へも応用出来ることを示し、内部空間に水分子を内包させた場合、この水分子と拡張部分の窒素原子との間に磁気的な双極子相互作用が存在することを示した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度の研究では、実験研究において新しい知見の発見があったため、次年度へ一部の資金を繰り越し、研究を継続させた。途中、コロナウィルスの影響があり、実験に必要な試薬や器具の調達が遅れたため、実験は若干遅れたものの、その間に大型計算機を用いた理論計算研究を進めることが可能であり、結果、おおむね順調に進展させることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
当初の研究計画に従い、引き続きフラーレン骨格の骨格変換反応の開発を進め、分子内部への小分子や活性化学種の挿入を行う。また、内包種を保ったままでの開口部の閉環や、2種類の化学種の内包を検討する。さらに、得られた化合物の固体物性を明らかにする。
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Research Products
(16 results)