2018 Fiscal Year Annual Research Report
Realization of nano-dynamics imaging of protein molecules in extremely soft membrane environments
Project/Area Number |
17H06121
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
安藤 敏夫 金沢大学, ナノ生命科学研究所, 特任教授 (50184320)
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Project Period (FY) |
2017-05-31 – 2022-03-31
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Keywords | 膜蛋白質 / 高速AFM / 走査型イオン伝導顕微鏡 / ダイナミクス / バイオイメージング |
Outline of Annual Research Achievements |
代表者は従来のAFMよりも千倍速い高速原子間力顕微鏡(高速AFM)を実現し、個々の蛋白質分子機械の機能動態をリアルタイム、高解像で直接観察することを世界で初めて可能にした。これまでに行った高速AFMイメージング研究は、高速AFMが他の手法では不可能な発見を可能にするブレークスルー技術であることを実証した。だが、生きた真核細胞や細胞内小器官の極めて柔らかい膜は大きく変形するため、その表面上にある蛋白質分子の高解像観察ができない。また、精製膜蛋白質系においては、生理的には存在する膜を挟んだ非対称な環境を持たせることができず、生理的環境下で膜蛋白質を観察することができない。そこで、以下①②③の技術開発を実施し、これらの困難な観察、及び、膜を一部除いた細胞の内部の動態観察を可能にする。 ①非接触イメージング可能な走査型イオン伝導顕微鏡(SICM)の高速化・低ノイズ化を更に進展させるとともに、カーボンナノチューブ(CNT)などを利用し解像度を向上させる。 ②膜タンパク質を中心にいくつかのタンパク質系の高速AFM観察を継続するとともに、小さな膜を宙に張り、膜表裏の間に非対称な環境を形成できるアッセイ系を開発する。 ③細胞内の構造を出来るだけ元の状態に保ったまま膜を一部除くアンルーフ処理法を開発する。 本プロジェクト二年目にあたる30年度の研究により、SICMのイメージング速度は従来比で100倍を超えた。高解像化については、初年度に実施したCNTプローブ作成法の開発を前進させた。また、CNTを使わずに先端孔の非常に小さなガラス製のナノプローブを作成可能か検討した。膜表裏の間に異なるイオン環境を与える技術については、新規なアイデアを検討した。真核細胞のアンルーフ処理法についても検討し、ストレスファイバーについては元の構造を維持できることを見出した。膜蛋白質の調製や高速AFM観察を実施した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
SICMの100倍の高速化は、初年度の段階でイオン電流ノイズとピペット抵抗の低減化により実現できていた。更なる高速化に向け、電流計測アンプの更なる低ノイズ化を進め、市販の超低ノイズアンプを上回る性能を実現し、400 kHzの帯域を達成した。高解像化については、初年度に行った手法(ガラスピペット先端に張った脂質二重層膜にCNTを自動挿入)を更に検討した。光重合性脂質がやはりCNT挿入に使えないことが確認されたため、この方向の技術検討を中止した。代わりに、誘電泳動により可溶化CNTをピペット先端のナノポアに挿入する方法を検討した。確率は低いもののCNTの挿入を確認した。加えて、ガラスピペット自身のナノポアを小さくする条件検討を行い、薄い壁(~5 nm)に囲まれたナノポア(最小で約3 nm)を形成可能であることを確認した。この寸法計測は開発した透過電顕観察法によるものである。生理的イオン環境を付与可能な微小膜の作成については、無数の孔の空いたタマビジンの二次元結晶を利用する方法を初年度に検討した。プロテオリポソームを結晶表面上で破裂させ脂質二重層を形成できるが、膜蛋白質を高い確率でナノポアに入れることは難しい。この手法検討と並行して、ガラスキャピラリーのナノポア(直径50-100 nm)に膜蛋白質を含む脂質を張る新しい手法の検討も行った。ナノポアにAFM探針をアプローチすることは極めて困難と思われたが、キャピラリー内部に光を通すことによりナノポアの位置を確認し、そこにAFM探針をアプローチすることができた。実際、ナノポアのAFMイメージングも実施できた。膜蛋白質については、ABCトランスポータなどを調製し、高速AFM観察を行った。細胞のアンルーフ処理については、先ずは超音波と界面活性剤を併用する方法で実施した。ストレスファイバーのように膜に強く結合した構造体は無傷のまま残り、ATP添加による収縮が観察された。
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Strategy for Future Research Activity |
いくつかの技術的課題は残されているが、それぞれのテーマでいくつかの有望な要素技術と新しいアイデアも出てきており、今のところ研究は順調に進展している。SICMの更なる高速化のための要素技術は、Z走査手順とパソコンの入出力部分だけが残っている。これらを早急に確立して世界最速のSICMを2019年度中に確立したい。高解像化については、ルーチン(高い確率)で利用可能な技術でなければならない。CNT利用よりもガラスナノピペットの先鋭化の方がその条件を満たす可能性が出てきたため、2019年度中にこの手法の検討を更に進め、実際に高解像の像が得られるか試験する。ガラスピペット先端へのAFM探針のアプローチとその先端部の高速AFMイメージングがうまく実施できたため、ピペット先端に膜蛋白質を含む膜を張る手法と張れたかどうかを簡便、迅速に検出する方法を検討し、実際に高速AFM観察できるか試験する。超音波と界面活性剤の併用よりも穏やかなアンルーフ処理を、膜孔形成毒素とナノディスク形成に利用される両親媒性ポリマーの併用で可能か検討する。
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Research Products
(16 results)
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[Journal Article] Dynamic structural states of ClpB involved in its disaggregation function2018
Author(s)
T. Uchihashi, Y. Watanabe, Y. Nakazaki, T. Yamasaki, H. Watanabe, T. Maruno, K. Ishii, S. Uchiyama, C. Song, K. Murata, R. Iino, and T. Ando
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Journal Title
Nature Communication
Volume: 9
Pages: 2147-
DOI
Peer Reviewed / Open Access
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[Presentation] Protein machinery enabling life2019
Author(s)
T. Ando
Organizer
Max von Laue Colloquium of the Physical Society of Berlin (Physikalisch-Technische Bundesanstalt Hörsaal im Hermann-von-Helmholtz-Bau, Berlin)
Int'l Joint Research / Invited
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