2019 Fiscal Year Annual Research Report
Realization of nano-dynamics imaging of protein molecules in extremely soft membrane environments
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17H06121
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
安藤 敏夫 金沢大学, ナノ生命科学研究所, 特任教授 (50184320)
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Project Period (FY) |
2017-05-31 – 2022-03-31
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Keywords | 膜蛋白質 / 高速AFM / 走査型イオン伝導顕微鏡 / バイオイメージング |
Outline of Annual Research Achievements |
代表者が開発した高速AFMは既に広く利用され、様々な蛋白質分子の動態観察研究が進んでいる。しかしそれでもなお、高速AFM観察できない試料系、現象が未だ多く存在する:生理的環境下にある精製膜蛋白質系、柔らかい高次構造体にある蛋白質分子のその場観察、細胞内の観察。そこで、以下の三課題を実施してきた。 ①膜表裏の間に非対称な環境を形成できるアッセイ系の実現 ②非接触イメージング可能な走査型イオン伝導顕微鏡(SICM)の高速化と高解像化、及び、その両立 ③高速AFMにおける探針-試料間接触力の更なる低減化 ①については、 (i) ガラスキャピラリー先端に膜を張り、高速AFM観察する方法、(ii) 基板に凹凸を形成させ、その表面に膜を張る方法を検討し、更に、(iii)膜剥離細胞の調製法を検討した。 (i)については先端部の高速AFMイメージングを既に成功させているが、新たにキャピラリー内外に電極を設置し、キャピラリー先端での膜形成をイオン電流の減少からモニターできるようになった。(ii)については、スパッタにより微粒子を数十nmの間隔で基板にコートする方法を見出した。実際に、このアッセイ系で膜蛋白質の観察に成功した。(iii)については多くの細胞内構造をインタクトに保つまでにはなっていない。②については、従来に比べ100倍以上の高速化を達成した(論文発表)。解像度を上げるためにCNTを利用する方法を検討してきたが、成功確率が低くルーチンで利用できるまでになっていない。そこで、レーザープラーのパラメータを検討し、開口半径1-3nmを達成した。高速性と高解像の両立については、開口径に依存しない拡散電位でもイメージングできることを見出した。③については、Z-スキャナー、振幅計測を数倍速くすることに成功し、また、ラスター走査を工夫することで低侵襲性能を飛躍的に向上させることに成功した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
いずれの研究課題も当初の目標に向け順調に進展している。予定していた手法がうまく行かない場合でも、第二、第三の手法を検討し、目標に近づくことができている。例えば、CNTを利用したSICM用ピペットの作成は成功確率が低いという問題があり未だ日常的に利用できる段階にないが、レーザープラーのパラメータを種々検討することにより、壁厚が3-6nmと薄く直径5nm以下の開口を有するナノピペットをルーチンで作成できるようになった。このような薄いガラス壁と微小孔をもつナノピペットの透過電顕による解析は電子ビームによる熱発生のため困難だが、この問題を克服する方法を開発し、利用している。また、このような微小ナノピペットに電解質を一様に充填することも非常に困難だが、これを克服する方法を見出した(論文発表)。膜表裏の間に非対称環境を持たせることができるアッセイ系の開発でも、当初予定していた方法に加え、別の手法を検討した結果、それぞれ特徴のあるアッセイ系をある程度開発できている。膜剥離細胞の調製でも、超音波法に加え、界面活性剤や両親媒性ペプチドなどの利用により、少なくとも細胞質膜の内側に結合しているクラスリンコート小胞やサルコメア様ストレスファイバーといった構造体を無傷のまま残し、それらの高速AFMによるその場観察にも成功している。高速SCIMの開発も順調に進展し、解像性能を落とさずに世界最速の性能を実現した(論文発表)。更に、イオン電流とは違い開口径に依存しない拡散電位もイメージングに利用できることを見出している。高速AFMにおける探針・試料間接触力の更なる低減化は当初予定しなかった課題だが、期待した以上の低侵襲性と高速性が達成され、更なる飛躍への第一歩となった。
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Strategy for Future Research Activity |
いずれの課題も順調に推移しているため、当初の研究目的を達成できるものと見込んでいる。インパクトのある実証研究と応用研究の成果を多く出せるかはマンパワーや共同研究の機会によるため予想できないが、研究期間内には2-3は出せるものと予想している。 ●膜蛋白質の生理環境下での動態を高速AFM観察するために構築してきたアッセイ系は、おそらくいずれも利用可能と見込んでいる。膜蛋白質MsbAでは、MsbA内部を移動してきたLipid AがMsbAの膜貫通ドメインにある中心孔から出てくる様子や、輸送と共役したATPase反応で駆動される動的構造変化を捉えられると期待している。膜結合蛋白質LSOについてはかなり研究が進んだ。だが、従来のアッセイ系では観察できなかった問題、すなわち、SLOにより切り取られた膜で形成される小胞がSLOリングの上面或いは下面のどちらから抜け出て孔が最終的に形成されるかという未解決問題を解決できると見込んでいる。学内外の膜蛋白質に詳しい研究者との共同研究も視野に入れている。 ●SICMの高速化と高解像化の両立は非常に挑戦的な課題だが、この検討のために装置の改造を現在進めている。これが完了次第、両立させるためのアイデアを実行に移す。具体的には、負に帯電したナノピペットのガラス壁を正電荷を有するシランなどで中和し、ナノピペットに正・負電荷の移動度が異なる電解質(NaClやLiClなど)を充填し、拡散電位計測によりイメージング可能か検討する。また、電荷の再配置にかかる時間をガラス壁の電荷中和により短縮できるかを検討する。 ●高速AFMの高速性と低侵襲性の改善は、現在の進捗状況から判断してかなり進展するものと見込んでいる。脆弱なタンパク質系を壊さずに最低でも毎秒30フレームの速度でイメージングできるものと見込んでいる。ひょっとすると、毎秒50フレームの速度まで行くかもしれない。
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Research Products
(28 results)
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[Journal Article] Phase separation organizes the site of autophagosome formation2020
Author(s)
Y. Fujioka, J. Md. Alam, D. Noshiro, K. Mouri, T. Ando, Y. Okada, A. I. May, R. L. Knorr, K. Suzuki, Y. Ohsumi, N. N. Noda
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Journal Title
Nature
Volume: 678
Pages: 301-305
DOI
Peer Reviewed / Int'l Joint Research
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[Journal Article] Structure of the mitochondrial import gate reveals distinct preprotein paths2019
Author(s)
Y. Araiso, A. Tsutsumi, J. Qiu, K. Imai,T. Shiota, J. Song, C. Lindau, L.-S. Wenz, H. Sakaue, K. Yunoki, S. Kawano, J. Suzuki, M. Wischnewski, C. Schütze, H. Ariyama, T. Ando, T. Becker, T. Lithgow, N. Wiedemann, N. Pfanner, M. Kikkawa, T. Endo
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Journal Title
Nature
Volume: 575
Pages: 395-401
DOI
Peer Reviewed / Int'l Joint Research
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[Journal Article] Structural insights into the substrate specificity switch mechanism of the type III protein export apparatus2019
Author(s)
Y. Inoue, Y. Ogawa, M. Kinoshita, N. Terahara, M. Shimada, N. Kodera, T. Ando, K. Namba, A. Kitao, K. Imada, T. Minamino
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Journal Title
Sttucture
Volume: 27
Pages: 965-976
DOI
Peer Reviewed
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[Journal Article] Metastable asymmetrical structure of shaftless V1 motor2019
Author(s)
S. Maruyama, K. Suzuki, M. Imamura, H. Sasaki, H. Matsunami, K. Mizutani, Y. Saito, F. L. Imai, Y. Ishizuka-Katsura, T. Kimura-Someya, M. Shirouzu, T. Uchihashi, T. Ando, I. Yamato, T. Murata
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Journal Title
Sci. Adv.
Volume: 5
Pages: eaau8149(10pp)
DOI
Peer Reviewed / Open Access
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[Presentation] High-speed AFM2019
Author(s)
T. Ando
Organizer
Keystone Symposia Conference: Imaging across scales leveraging the revolution in resolution. (Snowbird, Utah, USA)
Int'l Joint Research / Invited
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