2017 Fiscal Year Annual Research Report
Visualizing ultrafast dynamics of molecular structure with femtosecond X-ray solution scattering
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17H06141
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Research Institution | High Energy Accelerator Research Organization |
Principal Investigator |
足立 伸一 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構, 物質構造科学研究所, 教授 (60260220)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
野澤 俊介 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構, 物質構造科学研究所, 准教授 (20415053)
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Project Period (FY) |
2017-05-31 – 2022-03-31
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Keywords | 放射光X線 / 時間分解計測 / 超高速ダイナミクス |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、これまでに研究代表者らが蓄積リング光源で開発を進めてきたピコ秒時間分解X線溶液散乱測定法を基盤的な技術として活用し、X線自由電子レーザーの最大の特長であるX線パルス幅数フェムト秒の特性を最大限に活かして、サブ100フェムト秒時間分解能の時間分解X線計測を実現することを目標としている。これにより、液相光化学反応の超高速初期過程におけるコヒーレントな分子構造・電子状態の変化を観測することを最終の目的とする。この計測手法を、光触媒活性を有する金属錯体など、より広範な光化学反応系に適用することにより、加速器を基盤とするパルスX線光源を用いた超高速分子構造科学の分野創成と拡大を推進する。 平成29年度は、XFEL施設SACLAにおいて開発されたタイムスタンプ機能を、これまでに研究代表者等が開発した時間分解X線溶液散乱計測システムに導入することにより、時間ジッターとX線散乱データをショット毎に個別に測定することを実現し、サブ100フェムト秒の時間分解能を活かした時間分解X線溶液散乱計測に成功した。さらに、この計測システムを用いて、液相光化学反応の初期過程(サブピコ秒オーダー)におけるコヒーレントな分子振動(原子間距離の周期的な時間変動)に対応すると解釈される実験データを測定することに成功した。具体的には、シアノ金錯体水溶液を試料として、超高速結合形成過程におけるコヒーレントな分子振動が分子間距離の時間変動として直接観測できたと解釈している。今後は研究協力者と連携しながら測定データの解析と成果の取りまとめを進める。さらに、時間分解X線計測をより広範な光化学反応系に適用することを目指して、X線溶液散乱に加えて、X線吸収分光および発光分光による金属錯体溶液の光励起反応の計測を開始した。これらについても、引き続き精力的に計測を進める予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成29年度は、申請書に記載した通り、これまで研究代表者等が開発してきた時間分解X線溶液散乱計測システムにタイムスタンプ機能を導入することにより、ショット毎の時間ジッターとX線散乱データの計測を実現し、さらに液相光化学反応の初期過程(サブピコ秒オーダー)におけるコヒーレントな分子振動(原子間距離の周期的な時間変動)に対応すると解釈される実験データを測定することに成功した。これらを踏まえて、本研究課題は当初の計画通りに順調に進展していると自己評価している。 一方で、申請書に記載したX線2次元検出器の新規導入については、従来我々が使用していたX線2次元検出器に加えて、本予算により新たな検出器1台を購入する計画であったが、SACLA施設側で我々の計画とほぼ同一仕様の検出器1台が平成29年度中に導入されたことから、本予算での新規検出器の導入を見送り、従来から使用している検出器のアップグレードと補修による性能向上に本予算の一部を充当した。SACLA施設側で導入された検出器を活用することにより、当初の計画に沿って今後の研究を進展させることが可能である。 また一方で、時間分解X線計測をより広範な光化学反応系に適用するためには、従来のKEK内の蓄積リング光源を利用した初期の物質探索が極めて重要な課題である。KEKにおける新規物質探索をさらに効率的に進めるために、MHzオーダーの高繰り返し発振が可能なファイバーレーザーを新たに導入した。この高繰り返しレーザーは、蓄積リング光源のMHzオーダーの繰り返し周波数とのマッチングが良いことから、従来のkHzオーダーの固体レーザーを励起源として使用する場合に比べて、最大で約千倍もの測定効率の向上が見込まれる。この高繰り返しレーザーの導入も、新規物質探索において今後の研究進展に大いに貢献するであろうと期待している。
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Strategy for Future Research Activity |
基本的にH30年度以降も、申請書に記載した研究計画に沿って本研究課題を着実に推進する。まずH29年度に得られた実験結果について定量的な解析を進め、成果の取りまとめを行う。また本計測手法の適用範囲のさらなる拡大を目指して、時間分解X線溶液散乱に加えて、X線吸収分光および発光分光による金属錯体溶液の光励起反応の計測を開始した。これらについても、引き続き精力的に計測を進める予定である。
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Research Products
(32 results)