2018 Fiscal Year Annual Research Report
Visualizing ultrafast dynamics of molecular structure with femtosecond X-ray solution scattering
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17H06141
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Research Institution | High Energy Accelerator Research Organization |
Principal Investigator |
足立 伸一 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構, 物質構造科学研究所, 教授 (60260220)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
野澤 俊介 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構, 物質構造科学研究所, 准教授 (20415053)
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Project Period (FY) |
2017-05-31 – 2022-03-31
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Keywords | 放射光X線 / 時間分解計測 / 超高速ダイナミクス / X線自由電子レーザー |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、X線自由電子レーザーの最大の特長であるX線パルス幅数フェムト秒の特性を最大限に活かすために、アライバルタイミングモニターを活用してサブ100フェムト秒時間分解能の時間分解X線計測を実現することを目標としている。これにより、液相光化学反応の超高速初期過程におけるコヒーレントな分子構造・電子状態の変化を観測することを目的とする。さらに、この計測手法をより広範な光反応系に適用することにより、パルスX線光源を用いた超高速分子構造科学の分野創成と分野拡大を推進するべく、本研究に取り組んでいる。 平成30年度は、前年度にSACLA施設において得られた、シアノ金錯体の結合形成に伴うコヒーレント振動を観測した実験結果について詳細なデータ解析を進めた。データの解析と考察はほぼ完了しており、論文を準備して投稿への準備が整った段階にある。この成果については、次年度の論文発表を目指す。 一方で、平成30年度は、フェムト秒時間分解能の時間分解X線計測法のさらなる向上と深化を目指して、SACLA施設において様々な取り組みを行った。具体的には、(1)X線溶液散乱実験への大面積CCD検出器の導入、(2)蓄積リング光源でのピコ秒時間分解X線実験へのファイバーレーザーの導入、(3)X線吸収分光法へのフェムト秒時間分解X線計測の適用、(4)SACLA施設のself-seeding光を活用したフェムト秒時間分解X線計測の試み、(5)強相関電子系物質への時間分解X線回折法の適用、などである。これらの試みは、次年度以降のさらなる時間分解X線計測法の向上と深化につながると期待している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成29年度にSACLA施設の時間分解X線溶液散乱計測システムにタイムスタンプ機能を導入することにより、シアノ金錯体の結合形成に伴うコヒーレント振動の観測に成功した実験結果について、平成30年度に詳細なデータ解析を進めた。このデータ解析については、韓国のX線自由電子レーザー施設であるPAL-XFEL(韓国・浦項加速器施設に設置)においても測定条件を一部変更して同一試料の計測を行っており、2つの施設の実験データについて統一的な解釈を行うことに時間を要した。データの解析と考察はほぼ完了し、論文を作成して投稿への準備が整った段階にあり、次年度の論文発表を目指している。したがって、当初の計画通り概ね順調に進展していると自己評価している。 平成30年度からはSACLA施設に導入された大型X線二次元検出器の利用を開始した。これにより、従来の検出器では最大q=6A^-1に限定されていた計測角度範囲が、最大q=10A^-1まで計測可能となり、SACLA施設において世界最高レベルの高分解能X線散乱データ計測を実現したことは特筆すべき点である。今後、高角度分解能を活かした利用実験の実施を予定している。 また、KEKの蓄積リング光源を活用したピコ秒時間分解X線計測システムに対して、MHz繰返し可能なファイバーレーザーを導入した。これまでのピコ秒実験ではkHz繰返しのチタンサファイア固体レーザーを利用していたが、繰返し周波数が数百倍に向上したことにより、特に溶液試料の時間分解X線吸収分光測定の測定効率が格段に向上した。これにより、ピコ秒時間分解測定を用いて、SACLA施設における測定試料の予備的検討が促進された。平成30年度は溶液散乱測定だけでなく、X線吸収測定も実施して、フェムト秒時間分解能の時間分解X線計測法の適用範囲をさらに拡大することが可能となりつつある。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの進捗状況を踏まえると、当初の目的としていたアライバルタイミングモニターを活用したフェムト秒時間分解能の時間分解X線計測は着実に実現しつつある。この測定手法により、液相光化学反応の超高速初期過程におけるコヒーレントな分子構造・電子状態の変化が実際に観測されつつあることから、今後はさらにこの計測手法を高度化するとともに、より広範な光反応系に適用することにより、パルスX線光源を用いた超高速分子構造科学の分野創成と分野拡大を推進したい。 X線溶液散乱についてはSACLA施設における検出器の大面積化と高エネルギー(18keV)X線の利用のメリットを最大限に活かし、世界の他施設の追随を許さない高分解能X線散乱データの計測と解析を進める。また、並行してX線吸収分光法にフェムト秒時間分解X線計測法を適用し、X線散乱法と相補的な情報の取得を目指す。 測定手法の高度化については、SACLA施設の独自技術である反射型結晶を使ったself-seeding光を活用したフェムト秒時間分解X線計測に注目している。self-seeding光は自発誘導放射光(SASE-FEL光)に比べて、エネルギーバンド幅が約1/10程度に狭帯域化することから、高い単色性が必要とされる実験、特に非線形光学実験に対して極めて有用である。このself-seeding光の特性を活かして、時間分解X線吸収実験をX線領域での2光子吸収に適用するといった新奇計測手法の開拓を目指して検討を進める。一方で、液相の光化学反応のみに留まらず、固相(薄膜)の強相関電子系物質へのフェムト秒時間分解X線回折法の適用についても今後検討を進める。
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Research Products
(27 results)
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[Journal Article] Tuning and Tracking of Coherent Shear Waves in Molecular Films2018
Author(s)
Lemke Henrik Till, Breiby Dag Werner, Adachi Shin-ichi, Koshihara Shinya, Kuhlman Thomas Scheby, Mariager Simon Oddsson, Nielsen Thomas Norskov, Wulff Michael, Solling Theis Ivan, Harrit Niels, Feidenhans’l Robert, Nielsen Martin Meedom (全17名)
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Journal Title
ACS Omega
Volume: 3
Pages: 9929~9933
DOI
Peer Reviewed / Open Access / Int'l Joint Research
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[Journal Article] Following the Birth of a Nanoplasma Produced by an Ultrashort Hard-X-Ray Laser in Xenon Clusters2018
Author(s)
Kumagai Yoshiaki, Fukuzawa Hironobu, Motomura Koji, Iablonskyi Denys, Nagaya Kiyonobu, Wada Shin-ichi, Ito Yuta, Takanashi Tsukasa, Sakakibara Yuta, Katayama Tetsuo, Togashi Tadashi, Tono Kensuke, Yabashi Makina, Golubev Nikolay V., Gokhberg Kirill, Cederbaum Lorenz S., Kuleff Alexander I., Ueda Kiyoshi (全34名)
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Journal Title
Physical Review X
Volume: 8
Pages: 031034
DOI
Peer Reviewed / Open Access / Int'l Joint Research
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