2020 Fiscal Year Annual Research Report
New evolution of materials concept and application of electrides
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17H06153
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
細野 秀雄 東京工業大学, 元素戦略研究センター, 特命教授 (30157028)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
松石 聡 東京工業大学, 元素戦略研究センター, 准教授 (30452006)
多田 朋史 東京工業大学, 元素戦略研究センター, 特任教授 (40376512)
金 正煥 東京工業大学, 元素戦略研究センター, 助教 (90780586)
井手 啓介 東京工業大学, 科学技術創成研究院, 助教 (70752799)
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Project Period (FY) |
2017-05-31 – 2022-03-31
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Keywords | 電子化物 / 金属間化合物 / 触媒 / バンド構造 / 電子物性 |
Outline of Annual Research Achievements |
電子がアニオンとして働く物質の総称であるエレクトライド(電子化物) は、これまでバルクのイオン性結晶を母体とするものに限定されている。本研究ではこのコンセプトを金属間化合物、アモルファス、表面などに拡張することで、新物質・新機能の開拓とそのユニークな特徴を活かした応用を開拓することが目的。これまでの成果の概要は以下の通り。
●新物質・物性解明:新物質関係では、金属間化合物で電子化物を見出した。また物性解明では、2次元電子化物でアニオン電子が層間に存在することを、Y2Cを用いてARPES測定とDFT計算で実証した。 ●新規物性・新概念の発見:エレクトライドに特徴的な物性値として低仕事関数に加え、3つの新規物性が見出された。①Mott 絶縁体が金属間化合物のエレクトラドYb5Sb3とSr5P3で見出された。② 1次元エレクトライド物質Nb5Ir3がTc=~10Kの超伝導を示し、電子比熱の測定から強い相互作用によって超伝導が生じていることが判明した。③C12A7:eに水素プラズマを作用させると、高密度のH-イオンビームが生成できることが見出された。核融合分野で注目された。 ●応用展開:アモルファスC12A7エレクトライド薄膜を電子注入層(EIL)として用いることで、逆積み構造(カソードが上部)で、順積みと同等ないし優れた発光効率をしめす有機ELデバイスが実現した。また、金属間化合物のエレクトライドが化学的・熱的に安定であったことから、いろいろな化学反応の触媒として検討したところ、アンモニア合成反応、アレン類の選択イオン化、およびSusuki Couplingで高い活性と安定性をもつことを見出した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
●中性電子化物の発見 これまでの電子化物は、化学量論からCa2Nのように電子不足の化合物に限定されていたが、今回 Na3Nという電子不足ではなく正規の量論の化合物が、電子化物であることを、電子物性と第一原理計算から明らかにした。この物質は、(Na+)3(N3-)と書けるイオン結晶で絶縁体であると捉えられていたが、実際に合成してみると黒色で金属的性質をしました。価電子帯トップ(VBM)を構成しているN2p軌道から結晶の空孔サイトに電子が部分的に移動し、ホールがVBMに導入された状態が実現してことが分かった。 ● 層間電子で誘起された2次元電子化物の磁性 中性子の非弾性散乱測定から、Q=0付近にピークが観測され、そのQによる減衰はY4d電子によるものよりも急激であるなどのデータから、実測されたCurie-Weiss磁性はアニオン電子に起因すると結論した。 ● C12A7電子化物中にN2分子の包接:Ship-in-Bottle合成 C12A7のケージは正の電荷を帯びているために、これまでアニオンしかその中に包接できなかった。電子化物にしておいて500℃でNH3を流すとNH2-として包接され、それを800℃に加熱すると2NH-=N2+H2+2e という反応で、中性のN2分子が高濃度に包接できることが分かった。
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Strategy for Future Research Activity |
懸案の一つであった電子化物のコンセプトを電子過剰型から中性化合物まで拡張することができた。この成功は、結晶中の空孔サイトのエネルギー準位とCBMの相対関係で、前者の方のエネルギーが低ければ電子化物が実現する、というクリアなアイデアが得られた。いわば“結晶内の空隙の電子活性化”というコンセプトになる。この線に沿って新電子化物を探索する。 また、応用ではこれまで電子供与のプロモータでして多用されているアルカリの役割が電子化物との関係でその機構が解明できるのではないかという発想を得ている。これについても計算で実証したい。
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Research Products
(19 results)