2019 Fiscal Year Annual Research Report
Immune systems involved in the resolution of inflammation and tissue repair
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17H06175
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
吉村 昭彦 慶應義塾大学, 医学部(信濃町), 教授 (90182815)
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Project Period (FY) |
2017-05-31 – 2022-03-31
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Keywords | 炎症 / 免疫制御 / マクロファージ / 制御性T細胞 / 神経炎症 |
Outline of Annual Research Achievements |
実験的脳虚血再灌流では、発症2週目以降の慢性期にT細胞が集積することが見出された。細胞を分画したところ集積するCD4陽性T細胞のうちおよそ半数がFoxp3陽性の制御性T細胞(Treg)であった。そこでDEREGマウス(ジフテリア毒素(DT)によってTregを一過性に除去できるマウス)を用いてTregを除去すると神経症状が悪化した。逆にRag欠損マウスやCD3欠損マウスのようなT細胞が存在しないマウスにTregを戻すと神経症状が改善された。これらのことから脳梗塞慢性期には脳内にTregが大量に浸潤し神経症状の改善に重要な役割を果たしていることが示された。抗Foxp3抗体やCD3抗体、抗GFAP抗体で蛍光免疫染色を行ない、慢性期のTregの局在やアストロサイトの活性化の状態を計測した。Tregの除去はCD4抗体投与やFoxp3遺伝子依存的にジフテリア毒素受容体を発現するDEREGマウスを用いた。網羅的遺伝子解析はマイクロアレイ、TCRレパトア解析は一細胞分離後のRTーPCRによって行なった。セロトニン受容体遺伝子の欠損はCRISPR/Cas9と特異的gRNAをエレクトロポレーションで導入する方法によって行なった。その他個体での機能解析のためにIL-33欠損マウスやAreg欠損マウスからTregを単離してT細胞を欠落するCD3欠損マウスやRag欠損マウスに移入して脳梗塞モデルを行なった。試験管内でTregの評価を行うために、試験管内で脳Tregと活性化したミクログリアやアストロサイトを共培養し、IL-6の産生をELISA法にて測定した。ケモカインやセロトニンの意義を調べるためにCCL1、CCL20、セロトニンを脳室内投与し、アストログリオーシスの計測や行動実験を行なった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本研究の目的は、マウス実験的脳梗塞モデルを用いて炎症の終息と組織修復に関わる免疫応答を明らかにすることである。特に慢性期の獲得免疫応答におけるT細胞の役割についてはこれまで全く不明であった。本研究では様々な脳内炎症におけるリンパ球が認識する脳内抗原の神経修復過程への意義およびそのメカニズムの解明、治療応用を目的としていた。 実験的脳虚血再灌流では、発症2週目以降の慢性期にT細胞が集積することが見出された。細胞を分画したところ集積するCD4陽性T細胞のうちおよそ半数がFoxp3陽性の制御性T細胞(Treg)であった。そこでDEREGマウス(ジフテリア毒素(DT)によってTregを一過性に除去できるマウス)を用いてTregを除去すると神経症状が悪化した。逆にRag欠損マウスやCD3欠損マウスのようなT細胞が存在しないマウスにTregを戻すと神経症状が改善された。これらのことから脳梗塞慢性期には脳内にTregが大量に浸潤し神経症状の改善に重要な役割を果たしていることが示された。脳Tregはアンフィレグリン(Areg)を分泌してアストロサイトの活性化を制御し、結果的に神経症状の回復を助けていることを見出した。さらに遺伝子発現解析から脳Tregは他の組織Tregに類似していることが示された。また脳Tergには脳特異的な遺伝子発現も見られた。特にセロトニン受容体7(Htr7)に注目したところ脳TregはHtr7依存的に増殖・活性化された。脳Tregは脳という特殊な環境に順応した機能を獲得しており、神経伝達物質によって刺激を受け増幅するという非常に興味深い性質を有していた。これらの解析をまとめて2019年にNature 565: 246-50に報告した。
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Strategy for Future Research Activity |
(1)実験的脳虚血モデルを用いて制御性T細胞(Treg)を誘導する脳内因子および転写因子を明らかにする。 (2) 脳梗塞マウスよりTregを単離し、再脳梗塞モデルや実験的自己免疫性の脊髄炎(EAE)、アルツハイマーモデルの抑制効果を調べる。またEAEやアルツハイマーモデルのにおける脳内Tregの解析を行う。 (3) 浸潤TregのT細胞受容体(TCR)およびその抗原を同定する。TCR遺伝子のクローニングは完了し現在脳抗原との反応を調べている。BCR遺伝子のクローニングも進行中である。今後抗原の同定に向けて実験を進める。
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Research Products
(13 results)
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[Journal Article] TGF-β-induced epigenetic deregulation of SOCS3 facilitates STAT3 signaling to promote fibrosis.2020
Author(s)
Dees C, Potter S, Zhang Y, Bergmann C, Zhou X, Luber M, Wohlfahrt T, Karouzakis E, Ramming A, Gelse K, Yoshimura A, Jaenisch R, Distler O, Schett G, Distler JH.
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Journal Title
J Clin Invest.
Volume: 印刷中
Pages: 印刷中
DOI
Peer Reviewed / Open Access / Int'l Joint Research
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[Journal Article] Brain Regulatory T Cells Suppress Astrogliosis and Potentiate Neurological Recovery2019
Author(s)
Ito M, Komai K, Mise-Omata S, Iizuka-Koga M, Noguchi Y, Kondo T, Sakai R, Matsuo K, Nakayama T, Yoshie O, Nakatsukasa H, Chikuma S, Shichita T, Yoshimura A
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Journal Title
Nature
Volume: 565
Pages: 246-250
DOI
Peer Reviewed / Open Access
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