2018 Fiscal Year Annual Research Report
オルガノドライブラリーの構築による消化器疾患形質の統合的理解
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17H06176
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
佐藤 俊朗 慶應義塾大学, 医学部(信濃町), 教授 (70365245)
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Project Period (FY) |
2017-05-31 – 2022-03-31
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Keywords | オルガノイド / 大腸がん |
Outline of Annual Research Achievements |
近年,腫瘍疾患などのゲノム・エピゲノム異常を網羅的に解析できるようになったが,ヒト組織の生物的形質変化を解析するアプローチが欠如している.我々は,オルガノイド技術をヒト消化器疾患組織に応用し,下記の3つの課題に取り組んでいる. (1)消化器疾患オルガノイドライブラリーの構築. 55ラインの大腸腫瘍,45ラインの膵がんのオルガノイドライブラリーの確立した(Cell Stem Cell 2016, Cell Stem Cell 2018). また,37ラインの胃がんオルガノイドライブラリーを構築し,Cell誌に報告した.(Cell 2018). さらに,消化器希少がんサンプルからのがんオルガノイドを樹立し,新しいオルガノイドライブラリーの構築を目指す. (2)ゲノム編集オルガノイドによるGenotype-Phenotype解析系の確立. 我々はゲノム編集をヒト大腸オルガノイドに応用し,人工大腸発がんモデルを確立した(Matano M et al. Nature Medicine 2015).さらに,ゲノム編集を用いた遺伝子相同組み換え技術により,LGR5幹細胞マーカーを指標とした,幹細胞の子孫系譜解析に成功した(Nature 2017, Cell Stem Cell 2018).また,オルガノイドライブラリーで見出した胃がんのCDH1/TP53変異の細胞自律的増殖作用をゲノム編集によって確認した(Cell 2018). (3)薬剤感受性形質の多次元的理解と予測アルゴリズムの創出 患者より樹立したがんオルガノイドの抗がん剤の薬剤感受性を高いスループットで解析するプラットフォームを確立中である.得られたオルガノイドライブラリーの包括的な分子プロファイルと組み合わせ,ゲノム異常と薬剤感受性の因果関係に迫る研究システムの構築を目指す.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は臨床サンプルから,大腸がん,膵がん,胃がんオルガノイドの樹立を行った.また,新規および既存の患者由来オルガノイドのバイオバンクとしての供与に関する倫理申請を行い,当該機関での承認を得て,国内外の疾患オルガノイドの需要に応える環境整備を行った.45ラインからなる膵がんオルガノイドライブラリーを確立し,全エキソーム解析,遺伝子発現解析,コピー数解析,メチル化マイクロアレイ解析からなる統合解析を行い,Cell Stem Cell誌に論文発表を行った.ヒトがんオルガノイドおよび正常大腸オルガノイドに対する効率的なゲノム編集技術の導入に成功し,世界で初めてヒト組織幹細胞およびヒトがん幹細胞の相同遺伝子組換えによる遺伝子レポーターノックインに成功した(Shimokawa M et al. Nature 2017, Sugimoto S et al. Cell Stem Cell 2018). 大腸幹細胞マーカーであるLGR5陽性細胞およびその子孫細胞の蛍光可視化を行い,これまで不可能であったヒト組織幹細胞の細胞系譜解析に成功した.また,既に樹立した大腸がんオルガノイドを用い,Flow cytometryとHigh Contents Analyzerを利用したがんオルガノイドのHigh Throughput Screeningシステムを確立した.さらに,がんオルガノイドの効率的な異種移植システムを確立し,論文報告した(Seino T et al. Cell Stem Cell 2018). また,本邦で発症頻度の高い胃がんに着目し,37ラインの胃がんオルガノイドライブラリーの構築とその全エキソーム解析,遺伝子発現解析,コピー数解析,メチル化マイクロアレイ解析を行った.本研究成果はCell誌に報告し,高い評価を得ている.このように,申請書に記載した研究は想定以上に順調に達成された.
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Strategy for Future Research Activity |
前年度に引き続き,臨床検体由来サンプルからのオルガノイド樹立を行う.また,バイオバンクとしての機能の拡充を行い,国内外へのオルガノイド培養技術の普及と医学生物学の進歩に貢献していく.大腸がん,膵がん,胃がんオルガノイドに続いて,他の消化器がんからのオルガノイドライブラリーの構築と統合解析を行う. また,胃がんオルガノイドライブラリーの構築を行ったが,胃がんは腫瘍間の生物学的な形質の差異が大きく,さらなるサンプル数の蓄積と統合解析を行う. ゲノム編集を用いた染色体のエンジニアリングを進め,これまでの遺伝子変異導入と遺伝子変異ノックインに続く,第3の人工的ながんゲノムの再構成技術を確立する.これらの技術を組み合わせることにより,従来までに未達成であった,より高精度の人工がん作製を行う. さらに,前年度までに確立してきたHigh Throughput Screeningの最適化を行い,臨床の化学療法感受性を予測可能な精度の個別化医療応用プラットフォームの確立を目指す.
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Research Products
(12 results)
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[Journal Article] Divergent Routes toward Wnt and R-spondin Niche Independency during Human Gastric Carcinogenesis2018
Author(s)
Nanki K, Toshimitsu K, Takano A, Fujii M, Shimokawa M, Ohta Y, Matano M, Seino T, Nishikori S, Ishikawa K, Kawasaki K, Togasaki K, Takahashi S, Sukawa Y, Ishida H, Sugimoto S, Kawakubo H, Kim J, Kitagawa Y, Sekine S, Koo BK, Kanai T, Sato T*
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Journal Title
Cell
Volume: 174
Pages: 856~869
DOI
Peer Reviewed / Open Access / Int'l Joint Research
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