2017 Fiscal Year Annual Research Report
Why noroviruses are accumulated in oysters: To unravel the mechanisms
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17H06213
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
大村 達夫 東北大学, 未来科学技術共同研究センター, 教授 (30111248)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
藤井 学 東京工業大学, 環境・社会理工学院, 特任准教授 (30598503)
三浦 尚之 国立保健医療科学院, その他部局等, 主任研究官 (70770014)
渡辺 幸三 愛媛大学, 理工学研究科(工学系), 教授 (80634435)
佐野 大輔 東北大学, 工学研究科, 准教授 (80550368)
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Project Period (FY) |
2017-06-30 – 2020-03-31
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Keywords | ノロウイルス / カキ / プランクトン |
Outline of Annual Research Achievements |
平成29年度は,カキを養殖している海域の4地点において,プランクトンネットを用いて海水200~560Lに含まれる植物および動物プランクトン試料を採取した。プランクトン採取時のばらつきを評価するため,各地点において濃縮試料(約40mL)のレプリケートを3~4本採取した。濃縮試料にグアニジンイソチオシアネートを含む細胞溶解液を加えてインキュベートし,抽出された核酸を磁性シリカビーズを用いて精製した。この核酸試料をノロウイルスGII遺伝子を標的としたリアルタイムRT-PCRに供したところ,4地点全ての植物および動物プランクトン試料から陽性反応が確認された。植物プランクトン試料は,地点に依らず1~2本のレプリケートが陽性で,海水中の濃度に換算したノロウイルスGII濃度は40~400copies/Lだった。一方で,動物プランクトン試料は河口に近い地点において3~4本が陽性となり,河口に最も近い地点のノロウイルスGII濃度は940copies/Lだった。ノロウイルスGIIが陽性となった合計14のプランクトン試料のうち,5つから遺伝子型同定のためのPCR産物が得られ,シーケンス解析の結果,塩基配列は全て一致しており,遺伝子型はGII.4 Den Haag 2006bだった。以上の結果から,動物プランクトンがノロウイルスを吸着した植物プランクトンを摂取する可能性が示唆された。 また,カキ消化組織上糖鎖への結合を評価するために,中腸腺試料からの糖タンパク質抽出手法を検討した。リン酸ナトリウム緩衝液とステンレスビーズを用いて中腸腺組織を破砕し,加温する処理により,カキ1個体から採取した0.5gの中腸腺から0.4~1.8mg/mLの十分な糖タンパク質試料が得られた。平成30年度に実施する予定であるカキ消化組織の糖鎖発現プロファイル解析の基礎となる糖タンパク質抽出手法を整備することができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では,ノロウイルスの海域での戦略について以下に示す2つの仮説を立てた。 仮説(1):ノロウイルスはシルトなどの無機質に吸着・浮遊し,海域の厳しい環境から自身を守り,カキの食餌行動の際に自然に体内に取り込まれ蓄積する。 仮説(2):ノロウイルスは始めに海域の植物プランクトン表面に存在する多糖などの有機質に吸着し,その後,動物プランクトンに摂取されるのをじっと待ち,最終的にカキがその動物プランクトンを摂取することで蓄積する。 平成29年度に行ったカキ養殖海域における調査では,植物プランクトン試料よりも動物プランクトン試料の方がノロウイルスの検出率や濃度が高く,かつ検出されたノロウイルスの塩基配列は全て一致しており,2つ目の仮説を支持するデータが得られた。また,カキに摂取されたノロウイルスの中腸腺への蓄積機構を明らかにするためのプロトコールも整備でき,実施計画に沿っておおむね順調に研究を遂行することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究では,上述した2つの仮説を検証するために,ノロウイルスがカキに蓄積するまでの3つのプロセスを科学的に明らかにする。その内容は以下の通りである。 プロセスⅠ:シルトもしくは植物プランクトンへのノロウイルスの吸着機構。平成30年度は,主にシルトへの吸着の可能性を研究する。原理的にノロウイルスとシルトは電気的にネガティブに帯電しており吸着は困難と考えられるが,海域にはCa2+とMg2+の陽イオンそしてフミン物質が存在しており,吸着する可能性がある。また平成30年度の中頃まで,植物プランクトンへの吸着について研究を行う。 プロセスⅡ:動物プランクトンがノロウイルスを吸着した植物プランクトンを摂取することの証明。カキを養殖している海域(松島湾,広島湾など)から動物プランクトンを採取し,動物プランクトンからノロウイルス遺伝子の検出を目指す。この研究はほぼ3年間を予定しており,再現性を確認する。 プロセスⅢ:カキに摂取されたノロウイルスの中腸腺への定着機構。このプロセスでは,カキの糖鎖発現プロファイルを網羅的に同定するために,レクチンアレイの技術を使用する。まず,収集したカキ試料の消化組織から,平成29年度に検討した手法によって糖タンパク質画分を抽出する。次に,抽出糖鎖の還元末端を還元アミノ化反応によって蛍光標識する。最後に,蛍光標識後の試料をチップ上に滴下してレクチンと相互作用させることで,蛍光観察により結合した糖鎖を同定する。
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