2017 Fiscal Year Annual Research Report
Development of novel nature-technology for biological wastewater treatment to remove metals and persistent substances
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17H06214
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
大橋 晶良 広島大学, 工学研究科, 教授 (70169035)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
金田一 智規 広島大学, 工学研究科, 助教 (10379901)
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Project Period (FY) |
2017-06-30 – 2020-03-31
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Keywords | 排水処理技術 / 金属資源回収 / 生物学的手法 / ネイチャーテクノロジー |
Outline of Annual Research Achievements |
マンガン酸化細菌により生成されるバイオMn酸化物は多様な金属の吸着性に優れていることが知られている。しかし,なぜMn(II)イオンを酸化するのか,どのようなメカニズムでバイオMn酸化物を生成するのか,など不明なことが未だ多い。また,開放系においては,マンガン酸化細菌を培養してバイオリアクター内に保持することが困難であった。そこで,本研究代表者はマンガン酸化細菌を利用した排水処理の研究を進めていて,新規の方法でマンガン酸化細菌を培養し,排水から金属を除去することに成功している。この研究の過程で,染料などの難分解性有機物の除去,および金属との同時除去の可能性が明らかになった。 マンガン酸化細菌を利用した金属および難分解性排水の新規処理技術を開拓し構築するには,さらなる研究が必要であり,本研究では5つの研究項目からなり,1年目は次の研究成果を得た。 1.バイオMn酸化物生成機構:Mn(Ⅱ)酸化は細胞の表層で起きているのではなく,バイオMn酸化物の先端でMn(Ⅱ)酸化し,スーパーオキシドが生成され,発生した電子がバイオMn酸化物を伝わって細胞内で酸素を還元しており,これによって層状に成長すると考えている。そこで,まずマンガン酸化細菌の分離株を獲得し,電子が流れているかどうかを調べた。しかし,電流が小さくて検出が困難であるのか,流れていないのか,確認するまでには至っていない。 2.難分解性物質の分解特性:アゾ染料(Acid Orange7)は,マンガン酸化細菌により分解され,Mn(Ⅱ)酸化している場合は分解が高まることが分かった。一方,Acid Red 27のアゾ染料は,好気性環境下では分解されなかった。しかし,嫌気性環境下で脱色されることを発見した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
1.バイオMn酸化物生成機構 マンガン酸化細菌の5株を分離培養した。驚いたことに,3株は嫌気性環境下でもMn酸化物を還元して増殖することができることを発見した。その内のマンガン酸化および還元能力の高い細菌を用いて,マンガン酸化において電子が流れているかどうかを調べた。まず,マンガン酸化細菌とMn酸化物を濾紙で隔離して接触させない場合は,電子が流れないため増殖できないことを確認した。次に,バイアル瓶内で同様に濾紙で純菌とMn酸化物を隔離させているが,カーボンクロスと白金線で細菌とMn酸化物間を電気が流れることができる装置を製作した。この装置において,マンガン酸化細菌の培養を行った。しかし,電流が小さくて検出が困難であるのか,流れていないのか,確認できなかった。マンガン酸化および還元では,MCOあるいはheme peroxidaseの酵素が必要であり,培養液中に含まれるこれらの酵素をバイアル瓶に添加して,電子が流れる仮説の立証を試みる。 2.難分解性物質の分解特性 アゾ染料の分解は,Mn(Ⅱ)酸化の環境下で促進されることを明らかにした。しかし,少し分子構造が異なるだけで,分解しにくいアゾ染料があることが分かった。ただし,このアゾ染料は,好気性環境下では分解されることが分かった。難分解性染料は分子構造によって分解性が異なることから,アントラキノンなどの染料の分解性も調べ,分子構造と分解との関係を明らかにする予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究では5つの研究項目からなり,次年度は次の研究を実施する。 1.オーダーメイドの金属吸着とバイオMn酸化物結晶構造 バイオMn酸化物は多様な金属排水処理に適用できる。しかし悪く言えば,目的以外の有害でもなく有用でもない金属までも吸着して,目的の金属の除去・回収率が低下する。また,処理から回収に着目すると,目的の金属だけを特異的に吸着させるオーダーメイドの金属の除去・回収技術への進展で必要であり,吸着の特異性に影響するバイオMn酸化物結晶構造の層間距離をコントロールする条件を実験より明らかにする。そのため,1年目に分離した数株のマンガン酸化細菌をpHの異なる環境下で培養させ,同時にMn(II)イオンを酸化させてバイオMn酸化物を生産させる。性質が異なるであろうこれらのバイオMn酸化物の金属吸着性を調べる。 2.バイオMn酸化物耐性細菌と非耐性細菌の阻害・耐性メカニズム Mn酸化物の従属栄養細菌阻害効果を利用した新規の方法でバイオMn酸化物耐性細菌,非耐性細菌,マンガン酸化細菌をすでに数株を分離している。一般的に,寒天プレートに細菌のコロニーを形成させて分離するが,このプレートに高濃度のMn酸化物を含む寒天にすることで,Mn酸化物耐性細菌を分離できる。この中にマンガン酸化細菌が含まれており,Mn(II)酸化能を有する細菌であるマンガン酸化細菌をMn(Ⅳ)酸化物検出試薬(LBB)を用いて検出し分離できる。この方法で網羅的に分離株を取得して,金属耐性・非耐性の微生物生態を明らかにする。
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Research Products
(4 results)