2018 Fiscal Year Annual Research Report
A New Principle of Carbon Resource Conversion for Reduction of Carbon Dioxide Emission by a Large Scale
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17H06225
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
林 潤一郎 九州大学, 先導物質化学研究所, 教授 (60218576)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
前 一廣 京都大学, 工学研究科, 教授 (70192325)
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Project Period (FY) |
2017-06-30 – 2020-03-31
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Keywords | 炭素循環 / コプロダクション / 化石資源 / カーボンネガティブ / 改質・ガス化 / 脱燃焼 / 製鉄・セメント / シュウ酸 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、炭素資源、とくに化石資源を原料とする「CO2低減型」、「カーボンニュートラル型」および外部からCO2を正味で取り込むでカーボンネガティブ型の電力と化学品を併産するプロセス=CCSやCCUに依存しないコプロダクションを提案し、その原理的・プロセスエンジニアリング的妥当性を検証すること、さらに、電力・化学品コプロダクション(CP)の波及シナリオを描くことを目標として実施している研究である。昨年度は、電力・化学品CPの原理的妥当性を定常プロセスシミュレーションによって明らかとする成果を得たが、これを踏まえて、本年度は、まず「より現実的なプロセスシミュレーション」を市販のソフトウェアであるAspen Plus上で行った。具体的には、SOFC、改質反応器(ガス化反応器)、シフト反応器、ガス分離器(分離膜)および熱交換器を構成要素とし、電力と合成ガス(後段のC1化学プロセスにおけるターゲット;低級オレフィン、低級アルコール、ベンゼン、酢酸、ギ酸あるいはシュウ酸を合成するためのガス)をアウトプットとするシミュレーションを、系内ガス圧力を1~10 barとして行った。その結果、ガス圧縮による動力消費を除けば、プロセス性能は、ガス組成の化学平衡や熱交換を考慮しなかった昨年度のシミュレーションとほぼ同等であったばかりでなく、水素と水蒸気を含むSOFC排ガスを改質器に直接供給あるいはリサイクルCO2とともに供給することによって熱損失と蒸気需要を小さくできること、すなわち水蒸気・CO2混合型改質が有効であることを示した。以上に加えて石炭やバイオマスを原料とする場合のカリウム触媒利用型ガス化を想定したプロセス検討も実施した。 さらに、シュウ酸をC1合成の生成物とするCPは、製鉄やセメント、さらには化学品製造(石油化学代替)をすべてカーボンニュートラル化できる可能性も示した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
化石資源からの電力・化学品CPに関する検討はシミュレーションや構成要素プロセスの基本仕様などと併せて計画通りに進捗している。シュウ酸をC1化学のプロダクトとすることによってCPを最低でもカーボンニュートラル化(原料:石炭、モード:発電効率最大の場合であっても)あるいはカーボンネガテイブ化(天然ガス、任意の発電効率)できることは昨年度に見出し、本年度もそれを確認したが、シュウ酸を有効活用する手段を見出した。シュウ酸水溶液は鉄鉱石を常温付近で溶解してシュウ酸鉄を生成し、溶液に日光を照射すると2価鉄(シュウ酸鉄II)に還元、さらにシュウ酸鉄IIを水素気流中で加熱すると400℃程度の低温で(水素の実質的消費なしに)鉄に還元できる。この鉄は電炉法による製鉄に供することができる。シュウ酸由来CO2がカーボンネガティブCPに供給し、CP電力を電炉に供給すれば、カーボンニュートラル製鉄が可能になる。さらに、セメント製造のコアである石灰石の脱炭酸による生石灰製造においては、脱炭酸とメタンの水蒸気・酸素改質を同一反応器にて行い(生石灰が触媒となる)、生成ガスからシュウ酸と他の基幹有機物を合成すればカーボンニュートラルが実現することも机上で明らかにした。これらを電力・化学品CPを合わせることによって基幹化学品を供給する石油化学は実質的に不要となる。すなわち、 CO2排出量が大きい、4部門=電力・化学・製鉄・セメントを統合的にカーボンニュートラル化できる可能性を示すことができた。このシステムは研究開始当初には着想できなかったことであり、当初計画の想定を超えた成果である。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度は研究の最終年度であるが、研究完了および「4産業部門=電力・化学・製鉄・セメントをカーボンニュートラル化する」システムの提案に向け、以下を実施する。(1)電力・化学品CPの詳細シミュレーション:反応速度、熱交換速度を考慮したより現実的なシミュレーションを通じてプロトタイプを提示するとともに、社会実装研究の課題を明示する。(2)電力・化学・製鉄・セメントをカーボンニュートラル化するためのトータルシステムを提示する。(2)電力・化学品CPおよびシュウ酸を鍵物質とする4産業のカーボンニュートラル化の波及効果をアセスメントし、社会的意義を示す。
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