2017 Fiscal Year Annual Research Report
生体内発電にむけた超フレキシブル有機圧電フィルムの創製
Project/Area Number |
17H06229
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
石田 謙司 神戸大学, 工学研究科, 教授 (20303860)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
北村 雅季 神戸大学, 工学研究科, 教授 (10345142)
高嶋 一登 九州工業大学, 大学院生命体工学研究科, 准教授 (30435656)
福島 達也 神戸大学, 工学研究科, 講師 (70705392)
小柴 康子 神戸大学, 工学研究科, 助手 (70243326)
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Project Period (FY) |
2017-06-30 – 2020-03-31
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Keywords | 有機強誘電体 / イオン液体 / ゲル / 圧電性 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、超フレキシブル有機圧電型発電/センシングフィルムの開発と、疑似生体内環境での駆動検証である。本年度は圧電性と柔軟性を併せ強誘電体ゲルの作製と基礎物性の検証を行った。有機強誘電体としてポリフッ化ビニリデン・三フッ化エチレンランダム共重合体P(VDF-TrFE)、イオン液体(IL)として[Emim][TFSI]を用い、浸透法と混合法にてP(VDF-TrFE)/IL浸透ゲルを作製し、そのゲル構造、強誘電性、圧電性について評価した。X線回折実験により、約13 °にイオン液体に由来する回折ピーク、約20 °にP(VDF-TrFE)に由来する回折ピークが観測され、ゲル中でイオン液体と強誘電層が一部相分離しつつもP(VDF-TrFE)分子が強誘電結晶相を形成していることが示唆された。次に混合ゲルの強誘電性を評価した。混合ゲル単層デバイスでは分極反転に由来すると考えられる電流ピークがわずかに観測されたが、同時にイオン液体に由来する大きなリーク電流が観測された。そこでブロッキング層を挿入した三層構造デバイスを試作したところ、分極反転に由来する電流ピークが明確に確認され、ゲルの分極反転に成功した。Pr=64 mC/m2と従来のP(VDF-TrFE)と同等の値が得られた。一方、抗電界はEc=7.1 MV/mと従来の固体P(VDF-TrFE)(Ec=50 MV/m)に比べ、非常に小さな値となった。これは、ゲル中のP(VDF-TrFE)分子が固体中よりも動きやすい状態にあり、ゲル化することで低い電圧でもゲル中の分極が反転可能になったためと考えられる。P(VDF-TrFE)/ILゲルの圧電性について、電圧印加時の逆圧電効果による変形量をレーザーを用いて測定することで評価した結果、圧電性の確認に成功した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
生体内の筋肉や臓器の弱くて小さな力/変形を電気変換してセンシングまたは発電するには、圧電性を有する超柔軟な素材が有力な素材候補となりうる。本年度は、柔軟且つ圧電性を有する新素材として強誘電性ゲルを着想し、その作製条件の探索、ゲル構造の解析、電気特性測定を通して、そのゲル構造と基礎物性を明らかにした。イオン液体との混合により形成された有機強誘電体ゲルでは、固体相にある有機強誘電体で必要となる外部電界の約1/5以下で分極反転が観測されるなど、優れた電場応答特性を明らかにすることができた。強誘電体ゲルの研究事例としては構造論的には幾つか存在するが、電気物性を実証的に明らかとした究事例は殆どないことから、有機強誘電体の新たな可能性を示す価値ある研究を実施することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
P(VDF/TrFE)/イオン液体ゲルにおける圧電特性について、詳細な成膜条件、膜構造、印加電圧などの実験条件を詳細検討し、特異な圧電性発現メカニズムの解明に取り組む。特に強誘電体分極とイオン液体との間に形成されるであろう界面分極についてインピーダンス分光測定による検証をこない、電気二重層形成の可能性を探る。イオン液体ゲルの圧電特性について詳細実験をこない印加電圧に対する変位特性、力学(変位)刺激に対する圧電信号特性を明らかとする。昨年度に立ち上げた拍動型心臓モデルを活用し心臓発電の基礎検証を行う。人間心臓X線CTデータから試作された心臓モデル上にP(VDF/TrFE)/イオン液体ゲル膜を貼り付け、例えば人間の安静時を想定した心臓拍動に対する試作フィルムの出力特性を調査する。心臓の動き(拡張期、拡張保持、収縮、収縮保持)に対するフィルム出力信号との相関性を解析することで心臓拍動の直接観察、発電特性について調査する。
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Research Products
(20 results)