2017 Fiscal Year Annual Research Report
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17H06235
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| Research Institution | Kyushu University |
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Principal Investigator |
井川 和宣 九州大学, 先導物質化学研究所, 助教 (80401529)
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| Project Period (FY) |
2017-06-30 – 2020-03-31
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| Keywords | 有機化学 / キラルケイ素分子 / キラルテクノロジー / 不斉合成 / 生理活性物質 |
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| Outline of Annual Research Achievements |
H29年度の研究では，先に我々が不斉合成法を確立したシラシクロペンテノールを不斉合成素子として用いることで，多様なシラシクロペンタン類を高立体選択的に不斉合成することに成功した．その鍵となるのはシラシクロペンテノールC4位ヒドロキシ基の置換反応であり，光延反応と辻-Trost反応を相補的に用いることで，立体化学が反転した，あるいは立体化学が保持された置換反応性生成物をそれぞれほぼ単一の立体異性体として得た．さらに，求核置換反応生成物を変換することで，シラシクロペンタントリオールの新規立体異性体を不斉合成した．今回不斉合成したシラシクロペンタントリオールと，これまでに合成している関連分子のセロトニン受容タンパクへの結合活性を比較することで，その活性の発現の鍵となる重要構造に関する知見を得た．さらに，本研究の過程において，生化学上重要なノルアドレナリン受容体やナトリウムチャネルに対して強い活性を示すシラシクロペンタン類を新たに見出すことに成功した．これらの結果は，キラルケイ素分子が特異な生理活性を発現することを意味しており，キラルケイ素分子の精密合成化学が新しい創薬研究の基盤技術となりうることを強く支持するものである．これらの研究成果の一部を国際学術誌（Synlett, 2017, 28, 2445-2448）に報告するとともに，生理活性シラシクロペンタン類の物質と製造法に関する特許を出願した（特願2018-032202）．
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| Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本研究課題の主目的の一つである，生理活性キラルケイ素分子の開発に関して大きな研究の進展が見られた．これらの研究成果は，キラルケイ素分子が特異な生理活性を発現することを意味しており，キラルケイ素分子の精密合成化学が新しい創薬研究の基盤技術となりうることを強く示唆している．さらに，多様なキラルシラシクロペンタン類の不斉合成法を開発することに成功したことから，それらの新手法を応用することで，生理活性キラル天然物の不斉炭素を不斉ケイ素に置き換えた，天然物型キラルケイ素分子の不斉合成研究を推進中である．また，キラルケイ素分子の基礎科学として，キラルケイ素ラジカルの立体化学的安定性やその合成化学的応用について研究を実施するとともに，不斉ケイ素上における求核置換反応の立体化学経路について多くの新知見を得た．その研究過程において，ビニルシラノールを鍵中間体とするキラルケイ素分子の新たな絶対立体化学決定法を開発することに成功した．これらの研究成果は，キラルケイ素テクノロジーの開拓における基礎的かつ重要なものであり，当初の研究計画以上に進展していると言える．
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| Strategy for Future Research Activity |
これまでに生理活性を見出しているキラルシラシクロペンタン類の活性の発現機構について精査するとともに，その代謝動態について精査する．すでに，ノルアドレナリン受容体に対する結合活性を有する新規シラシクロペンタンに関しては動物実験を実施しており，循環器系への影響について初期的な知見が得られるとともに，ICP-MSやMALDI-TOFMSなどを利用して，ケイ素を含む代謝物の探索と構造同定を進めている．また，天然物型のキラルケイ素分を不斉合成して，その活性と代謝動態を明らかにする．具体的には，ペプチドや多糖，プロスタグランジンなどのキラルケイ素アナログを合成する計画である．また，基礎的な知見が得られているキラルケイ素ラジカルの反応や不斉ケイ素上での求核置換反応を合成反応として積極的に応用して，キラルケイ素分子の精密不斉合成化学の確立を目指す．さらに，キラルケイ素分子を集積したキラル材料の合成と分析についても実施する計画である．
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Research Products
(9 results)
